益子で生きる、益子を活かす
ニュージーランドで20年間暮らしていた鈴木優子さん。
現在は益子町でセラピストとして活動しています。
ニュージーランドでの暮らし、日本に戻ってきて感じたこと、そして20年間の経験が今の自分にどうつながっているのか商工会の羽石がお聞きしました。
本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、ニュージーランドで20年間過ごされていたそうですが、どういったきっかけだったのでしょうか?
鈴木:もともとはイギリスへの短い旅行がきっかけでした。良い体験でした。旅行後にニュージーランドでのファームステイを知り、やってみたいなと思って旅行会社のツアーにふと申し込んだのが、始まりですね。
ファームステイ! どのような体験だったのでしょうか?
鈴木:羊のファームを営む老夫婦のお宅に2泊ほどお邪魔しました。おばあさんが手作りのご飯を並べてくれて、おじいさんが小型の四駆トラックの助手席に私を乗せて、ファームを案内してくれて。羊を追うのを見せてもらったり、羊の毛を機械で紡いで見せてくれたり、やってみたり。ピクニックにも連れてってくれましたね。
楽しそうですね。特に印象に残っている出来事はありますか?
鈴木:何より衝撃だったのが、ホストのおばあさんが、別れ際に「来てくれてありがとう」って、ぎゅっとハグしてくれたことなんです。なんかもうその時にすごい感動したってのがありますね。必要とされて愛をもらえるんだなって。
それまでの私は、何か成果を出したり、役割を果たしたりしないと認めてもらえないと思い込んでいました。でも、来ただけでいい、あなたという存在がここにいるだけで価値があるんだと、肯定されたような気がして。
来てくれてありがとうって、そんなふうに言ってくれるんですね。
そのときどんな気持ちでしたか?
鈴木:ええ。イギリスではどこか背筋を伸ばして緊張していた私が、ニュージーランドではふっと肩の力が抜けたんです。「あ、ここ、すごく居心地がいい」。その直感に従って、1週間のツアーが、1年のワーキングホリデーになり、気づけば20年が過ぎていました。
ワーキングホリデーでの1年間では、いろいろなファームで暮らしていたんですよね。
鈴木:ウーフ(WWOOF)という、労働と宿食を交換する仕組みで色々なファームを回りました。驚いたのは、どこの家でも「うちに泊まっていきなよ!」と、見ず知らずの私たちを当たり前に受け入れてくれることでした。結構何泊も。さすがに申し訳ないからお金を払ったほうがいいのではと思ったのですが。そうではなくて、本当に心から私たちがいることを楽しんでくれている感じでした。
うちに泊まっていきなよと、そんな自然に言うのですね。
鈴木:ニュージーランドは娯楽が少ない分、人が一番の楽しみなんです。
人が一番の楽しみってすごくいい言葉ですね。
鈴木:人が来て泊まってお話して。それが一大イベントみたいな。子供たちも、来客を一番のイベントとして楽しんでいましたね。私も日本人の旅行者に会うとつい「私の家においでよ。泊まっていって!」と言ってましたね。
日本にいた時からそうでしたか?その…知らない人とでもコミュニケーションを積極的にとるほうでしたか?
鈴木:なかなか日本にいる時はなかったですね。ですがニュージーランドにいるとね。10時と15時のティータイムになれば、近所の人が気軽に行き来しては、お茶を飲んで一緒にお喋りを楽しむ。そんなことばっかりやっていました。文化の違いが一番大きいかな。私の住んでいた家なんて、古いドアを再利用したもので鍵すらついていませんでした(笑)
20年ぶりに戻ってきて、驚いたことはありますか?
鈴木:帰国後に働いていた職場で。ある日フロアに行くと、100人を超える職員が、事前に何の周知もなかったはずなのに、全員同じ色のポロシャツを着ていたんです。私一人だけが、違う色の服を着ていて。
え!いつもは違うのに、その日は100人以上全員同じポロシャツだったのですか?何か特別な日だったのでしょうか。
鈴木:はい。きっと事前にお知らせされていたのを、私だけが見落としたのだと思います。それでもその光景を見た瞬間、吐き気がするほどの違和感に襲われました。
周りに合わせなければいけないという無言の圧力が、視覚的な暴力のように迫ってきて。
もちろん誰も私に何か責めるような事はありませんでしたよ。何も言わない。でも、全員が同じ方向を向いている。本当にこういうことってありえるんだなって体が反応しましたし、そんな自分にびっくりもしました。
そこまで強い違和感だったのですね。
鈴木:その時に痛感したんです。ああ、私はもう、日本人の感覚には戻れないんだって。
日本に戻ってきてから、今度は日本で暮らす人たちを見て、どんなことを感じましたか?
鈴木:子供が学校に行けなくなってしまったお母さん方の話を聞いたりすることがあって。
話を聞いてどう思いましたか?
鈴木:お母さん方もめちゃめちゃ悩んでいて。昔も今も変わってないんだなって。ちょっとびっくりしましたね。学校に行かせなきゃいけない、ちゃんとしなきゃいけないっていうプレッシャーや圧力がすごいんだなって。 ニュージーランドには学校に行かないでも、家で勉強するホームスクールという選択肢があります。周りもそれを白い目で見たりしません。それが当たり前みたいな感じ。
そういうちゃんとしなきゃという気持ちってやっぱり大きいですね。
鈴木:そうなんです。自分を犠牲にするのが当たり前になると、いつか心も体も壊れてしまいます。だからこそ、もっと自分を大事にしていい、わがままでいいんだよと思います。
鈴木さんご自身も、ニュージーランドで大変な時期があったんですよね。
鈴木:ニュージーランドでの最初のお産がひどい難産で、頼れる身内もいない異国の地で、心身ともにつらい時期がありました。その時、プロのカウンセラーに毎週、ただただ話を聞いてもらうことで、心が楽になりました。
そこから、どのようにして体へのアプローチに繋がったのですか?
鈴木:子供の寝つきが悪くて、少しでもリラックスして欲しくて足のマッサージを始めました。そこから徐々にほかの人に足のマッサージをやっていく内に、全身もやって欲しいというリクエストをもらって学び始めました。
自分自身がオイルマッサージを受けた時、衝撃を受けて。マッサージは痛いものだと思っていたのに、気持ちよくて。子育ての疲れはありましたが、片道5時間かけて運転して、マッサージを学びに行くハードな日々も元気に乗り越えるほどタフになったんです(笑)。マッサージってすごいなと思いました。
さらにその後ただ体に触れるだけのセラピーみたいなものをやっていく中で、もともと極度の緊張体質だったのですが、変化していくのを実感しました。また、二人目の子供を出産する時に、どうしたら楽にできるのかなと調べて体をリラックスさせる方法を教えてもらって。体がゆるむと、呼吸がかわる。呼吸がかわると、気持ちが少し楽になる。そして、自分自身の状態にも気づきやすくなる。私はそこに、体に触れることの大きな可能性を感じています。
体がゆるむと気持ちも少し楽になりますね
ニュージーランドでの20年間の経験は今のご自身にどんな影響を与えていると思いますか?今のお仕事にもつながっていますか?
鈴木:日本の方は本当に働きすぎです。ニュージーランドでは自由時間が長い。夕方5時には仕事が終わり、残業も週末働くことも無い。自由時間をケアの時間に使えるし、使いたいって思っているんですよね。戻ってきてからそこが違うなって。自分をケアしたいってところまでなかなか余裕と時間がね。無いですよね。自分をメンテナンスするというのは意識が高いのかなって。
そういった方に向けてということでしょうか?
鈴木:そうですね。自分を犠牲にしやすいというか、がんばりすぎてしまう方が多いというか。それが当たり前になっている。そういった人にも来ていただければと思います。なかなかそういった人に来てもらうことは大変ですけど。自分を大事にすることが、一番大事だと思うので。そこを一番伝えたいなとは思います。
私自身も、ちょっと肩の力をぬいて、自分を大切にしてみようと思いました。本日はありがとうございました。
鈴木:ありがとうございました。