益子で生きる、益子を活かす

今回は、地元・益子町で映像制作事業「JumPFilM」を営む菊地絢平氏にお話を伺いました。商工会経営指導員の手嶋が、地域の人々に愛される映像クリエイターの「心の原点」に迫ります。
今日はよろしくお願いします。
菊地:よろしくお願いします。……なんだか、普段はカメラを向ける側なのに、今日は自分が向けられる側なので、少し恥ずかしいですね(笑)。

まずは、現在の映像制作という仕事に至るまでの背景から伺いたいのですが、以前は現在とは全く違う業界で働かれていたんですよね。
菊地:そうですね。以前は大きな工場で働いていました。仕事そのものが嫌だったわけではないんです。与えられた仕事をきちんとこなすことは大切ですし、職場の人にも恵まれていました。ただ、毎日同じ工程を繰り返しているうちに、「自分が作っているものが、最終的にどうなるのか」が見えなくなっていったんです。
自分の仕事が、その先で誰に届いているのかが見えなかった。
菊地:そうなんです。誰が使っているのか、お客さんがどう感じているのかもわからない。もちろん、それが大きな会社や工場の仕組みなのだと思います。
でも、自分の中ではだんだん、「もっと直接、人の反応を感じられる仕事がしたい」と思うようになりました。
大きな組織の中で、一つの工程を担うことよりも、自分の仕事が誰かの喜びに直接つながっている実感を求めたわけですね。
菊地:はい。ちょっとかっこよく聞こえるかもしれませんが(笑)、自分が最初から最後まで関わったもので、目の前の人が喜ぶ顔を直接見たかったんです。
「ありがとう」と言ってもらえる仕事がしたかったというより、「うわ、嬉しい!」っていう瞬間を自分の目で見たかったんだと思います。その気持ちは、今の仕事にもずっとつながっています。
そこで、映像という具体的な道を選ばれたんですね。何かきっかけがあったのでしょうか?
菊地:もともと映画が好きだったというのはあります。ただ、「映像を仕事にしよう」と考えるようになった一番大きなきっかけは、友人の結婚式でプロフィールムービーを作ったことです。
最初から映像制作の経験があったわけではないですよね?
菊地:全然ありませんでした(笑)。撮影して、素材を集めて、編集して……全部手探りです。今思えば、よくやったなと思います。かなり苦労しましたが、完成した映像を結婚式で流した時に、友人がすごく喜んでくれたんです。その表情を見た瞬間に、「ああ、これだ」と思いました。
技術的にうまくできたこと以上に、相手が喜んでくれたことが大きかった。
菊地:そうですね。映像を作ること自体も楽しかったんですが、それ以上に、「自分が作ったもので人がこんなに喜んでくれるんだ」ということが嬉しかった。
それが、今の仕事の原点だと思います。
その後、会社を辞めてから、ハローワークの職業訓練校にも通いました。そこで出会った講師の方から、撮影の楽しさを教えてもらったんです。
それまでは「映像=編集」というイメージが強かったんですが、撮影を学んでいくうちに、「自分の目で見たものを切り取る」ということがどんどん面白くなっていきました。

現在は、どのような映像制作を多く手掛けていますか?
菊地:中小企業のPR動画や採用動画、それからファミリームービーですね。
企業さんの場合は、「どんな会社なのか」「どんな人が働いているのか」が伝わることが大切です。
一方で、個人のお客さんから依頼されるファミリームービーでは、お子さんの誕生日や成長の記録など、家族にとって大切な瞬間を撮影します。
これがまた、僕自身もすごく楽しいんです。

撮影する側も楽しんでいるんですね。
菊地:はい。特に子どもは、こちらが「こうしてください」と言っても、その通りには動いてくれません(笑)。でも、その予想外の動きの中に、その子らしさが出るんです。だから、決められたポーズを撮るだけではなく、その場で起きていることをよく見るようにしています。
町のイベント撮影も多く手掛けていますよね。イベントでは、どんなことを大切にしていますか?
菊地:来場者の「楽しそうな表情」を絶対に逃さないことです。イベントの映像を見た人が、「このイベント、楽しそうだな」「来年は自分も行ってみたい」と思ってくれるような映像にしたい。そのためには、ステージ上だけを撮っていても足りないんです。出演者の表情、スタッフの動き、会場で笑っている人、子どもたちが楽しんでいる様子……そういう何気ない瞬間を拾っていくことが大切だと思っています。

技術的な部分も、結局はその「瞬間」を捉えるためにあるということでしょうか?
菊地:まさにそうです。構図や明るさ、カメラの設定など、もちろん技術は必要です。でも、それだけでは良い映像にはならない。常に周りを見ていて、「今、いい表情をした!」と思った瞬間にカメラを構える。その瞬間を逃さないために、ずっとアンテナを張っています。難しいんですけど、そこが撮影の面白さでもあります。映像には、その場にいた人たちの「空気」まで残ると思うんです。だからこそ、ただ綺麗な映像を撮るのではなく、「その場にいる人たちが何を感じていたのか」まで伝えられる映像を作りたいですね。
企業のPRや採用動画では、イベントとは違った難しさもありそうですね。
菊地:ありますね。企業さんの場合、「自分たちのことを知ってほしい」という思いはあっても、普段から自分たちの仕事を説明することに慣れているとは限りません。
だから、撮影する側が一方的に「こういう映像にしましょう」と決めるのではなく、まずその会社の人が何を大切にしているのかを知ることが重要だと思っています。その会社にしかない魅力を見つけて、それを映像にする。それがPR動画の役割だと思います。

「撮る」ことだけではなく、「知る」ことも仕事の一部なんですね。
菊地:そうですね。映像って、完成したものだけを見ると、カメラや編集の技術に目が行きます。でも、その前に「誰を、何のために、どう見せるのか」を考えることが大事なんです。僕は、人と話すことも含めて撮影だと思っています。
その人のことを知れば知るほど、「ここを撮りたい」「この部分を伝えたい」というものが見えてくる。そうやって一緒に作っていくことが、映像制作の面白さだと思います。

益子に戻ってきて活動を始められて、町に対する印象はどうですか?
菊地:皆さん本当に温かいです。そして、ノリがいい(笑)。
カメラを向けると、照れながらもピースしてくれたり、「撮って撮って!」と反応してくれたり。そういうところが益子らしいなと思います。

商工会青年部とのつながりも、仕事に大きく影響していますよね。
菊地:本当に助けられています。青年部に入ってから、いろいろなイベントに声をかけてもらうようになりました。ハロウィンなどのイベントもそうですし、地域のさまざまな活動に関わらせてもらっています。最近では「もえぎ」さんのInstagram動画で、作家さんの撮影をさせてもらったりもしています。こういう仕事につながるのも、結局は人とのつながりなんですよね。
益子という地域そのものが、仕事のフィールドになっている。
菊地:そうですね。益子の人って、「それ面白そう、やってみよう!」と言ってくれる人が多いんです。もちろん、何かを始める時には不安もあります。でも、意見を出した時に「いいね、やってみよう」と受け入れてくれる人がいる。
その柔軟さや温かさには、すごく助けられています。自分一人で仕事をしているように見えて、実際にはたくさんの人に支えてもらっている。それを実感することが増えました。

最後に、将来的な展望や、これから新しく挑戦したいことを教えてください。
菊地:……実は、最終的には「映像を教える先生」になりたいと思っているんです。
先生ですか!それは少し意外ですね。
菊地:そうですか(笑)。自分自身、職業訓練校で恩師に出会って、映像の楽しさを教えてもらった経験があります。だから、いつか自分も、誰かにとってそういう存在になれたらいいなと思っています。それに、映像業界そのものに対して、少し危機感もあります。
今はスマートフォン一つでも簡単に動画が撮れますし、編集アプリもたくさんあります。誰でも映像を作れる時代になりました。それは素晴らしいことです。ただ一方で、「映像なら何でもいい」というように、映像そのものの価値が薄れてしまう怖さも感じています。だからこそ、正しい技術だけではなく、「映像を作ることの楽しさ」も伝えていきたいんです。
技術を教えるだけではなく、映像そのものの魅力を次の世代に伝えたい。
菊地:はい。今、B型作業所で非常勤として映像を教えています。
B型作業所というと、一般的な雇用契約が難しい方が安心して活動できる環境を提供する福祉サービスでしたね。
菊地:そうです。そこで皆さんと関わっていると、「昨日までできなかったことが、今日はできるようになった」という瞬間があるんです。その姿を見るのが、本当に嬉しい。最初は難しそうにしていた人が、自分で動画を作れるようになったり、編集したものを見せてくれたりする。そういう変化に立ち会えることが、自分にとってすごく幸せなんです。映像を仕事にする人を増やしたいというより、「映像を通じて、自分にはこんなことができるんだ」と思ってもらえる人を増やしたい。それができたら最高ですね。
菊地さんのお話を聞いていると、映像はあくまで「人を幸せにするためのツール」なんだなと感じます。技術そのものを追求するだけではなく、その先にいる人の笑顔を大切にしている。最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
菊地:僕はPRが苦手で、口下手なんですが……(笑)。だからこそ、言葉で説明するよりも、僕が作った映像を一度見ていただけたら嬉しいです。
確かに、映像は言葉以上に、その人の仕事への姿勢や人柄が伝わりますよね。
菊地:そうですね。Instagramにこれまで作った映像を載せているので、そこから僕がどんな映像を作っているのか、どんな空気感が好きなのかを感じてもらえたら嬉しいです。
これからも、皆さんと「楽しさ」を共有できる瞬間を撮り続けていきたい。
そして、映像を通じて、人と人がつながるきっかけを作っていけたらと思っています。
菊地さんのこれからの活躍を楽しみにしています!今日は本当にありがとうございました!!

