益子で生きる、益子を活かす 
栃木県芳賀郡益子町。緩やかな丘陵に囲まれた土地にある株式会社清水保険事務所にお邪魔しました。
事務所の扉を開けると、礼儀正しく立ち上がったスタッフの皆様の明るい挨拶に出迎えられます。相談に訪れた人が思わず「ちょっと聞いてよ」と長居したくなるような、陽だまりのような温かさがあります。
「地域貢献活動として、毎週月曜日の朝8時半から、全社員で、自社周辺の清掃をしています。10年以上続けてるんですよ」と嬉しそうに語るのは、2代目代表の清水史紀氏です。
この事務所の歩みを、商工会の経営指導員の加藤が経営の伴走者の視点から清水氏に伺います。
清水氏のこれまでの歩みは、決して平坦な一本道ではありませんでした。
かつて彼は、東京で10年間スポーツトレーナーとして活躍していました。
アスリートの心身に寄り添い、共に目標へ向かう。
その時の経験は今、事故や病という人生の窮地に立つ顧客を支える、現在の保険という仕事の根幹にあるのです。
加藤: 清水さん、今日はお忙しいところありがとうございます。こうして改めて向き合ってお話しするのは、少し照れくさいものですね(笑)。清水さんがこの業界に入られてから、もうずいぶん経つのではないですか?
清水: 本当ですね(笑)。こちらこそ、いつもお世話になっています。私がこの世界に飛び込んだのは27歳の時でした。それから数えると、今年で18年目になります。あっという間のような気もしますが、振り返ると濃密な時間でした。
加藤: 18年ですか……。今は代表として立派に事務所を切り盛りされていますが、もともとはお父様が創業されたんですよね。お父様はどういった経緯でこの仕事を始められたのでしょう。
清水: 父はもともと、車の整備士をしていたんです。そこから一念発起して保険代理店を始めた。法人の形にしたのは平成11年ですが、個人事業の時代を含めると、もう25年以上この益子の地で商売をさせていただいています。
加藤: 整備士から保険屋さんに。つまり「車の保険屋さん」がスタートだったのですね。
清水: そういうことになります。
加藤: お父様もかなりバイタリティのある方ですが、清水さんにとってお父様はどんな存在だったんですか?
清水: 私は小さい頃、野球少年でした。小中高と、野球。そして父は、野球チームの監督でした。そして私は、そのチームの選手。親子でもあるし、選手と監督でもあった。厳しい指導を受けることもありましたよ。それが時を経て、いつの間にか「社長」と「後継者」という関係に変わっていった。なんだか、ずっと父の背中を追いかけていると言うか、同じチームで戦っているような不思議な感覚なんです。
加藤: 素敵な関係ですね。でも、最初から「継ぐ」と決めていたわけではなかったとか。
清水: 全然(笑)。高校を卒業する時、父から「この仕事をやるか?」と聞かれたんですが、即答で「やらない。俺は好きなことをやる」と言い残して東京へ出ました。それから10年、スポーツトレーナーとしてがむしゃらに働きました。でも、ちょうど子供が幼稚園に上がるタイミングで、ふと思ったんです。「自分の技術で人を支えるのもいいけれど、生まれ育った地元に戻って、親孝行も含めて腰を据えて生きていくのも、一つの道なんじゃないか」って。
地方の保険代理店といえば、その売り上げの8〜9割が損害保険であることが一般的です。車社会である地方において、それは自然な姿かもしれません。しかし、清水保険事務所の構成比は「生保4:損保6」。このバランスの良さは、業界内でも驚きを持って受け止められています。
加藤: 清水さんのところは、生命保険の割合が非常に高いのですね。これは意識的に取り組んでこられた結果なのでしょうか。
清水: はい、そこは明確に戦略を持って取り組んできました。この益子町も例外ではありませんが、日本中が人口減少と車離れの波にさらされています。免許を返納される方も増えていますし、家を建てる方も減っている。自動車保険だけに頼っていては、10年、20年先、地域の皆さまを本当の意味で守り続けることはできない、と考えたんです。
加藤: なるほど。目先の更新業務だけでなく、もっと先の未来を見据えていたと。
清水: そういうことです。だからこそ、生命保険や、法人向けの「リスクマネジメント」に力を入れてきました。
加藤: リスクマネジメント。なんだかプロフェッショナルな響きですが、具体的にはどのようなことをされているんですか?
清水: 簡単に言えば、会社やご家庭の「穴」を見つける作業です。どんなに気をつけていても、人生には「もしも」の隙間がある。特に経営者の方々とお会いする際は、単なる保険の切り替えではなく、事業をどう継続させるか、社員さんを守るためにどんな備えが必要か、という本質的なご相談に乗ることが多いですね。そこを突き詰めていった結果、保険会社からも専門性を評価していただけるようになりました。


スマートフォン一つで、いつでも安く保険に入れる時代。そんな時代に、なぜ人はわざわざ清水氏のもとを訪れるのか。その答えは、デジタルでは決して埋められない「ヒューマンエラー」を補完する、清水氏の対話力にあります。
清水: よくネット型保険と比較されますが、私は全然構わないと思っているんです。保険料の安さだけで選ぶなら、ネットの方が有利な場合もあります。でも、一つだけ忘れてはいけないことがあります。保険という商品は、契約する時には「試食」ができないんですよ。
加藤: 試食……。確かにそうですね。実際に困った時にならないと、味(価値)がわからない。
清水: そうなんです。だからこそ、私たちのような対面の代理店が存在する意味がある。ネットだと、最後はご自身で細かい特約のチェックを入れなきゃいけないですよね。そこで「本当はこれが必要だったのに、選んでいなかった」というミスが起きる。それが一番怖いヒューマンエラーです。私たちは、お客様の表情を見ながら、その奥にある思いや不安をじっくり聞き出します。
加藤: 清水さんと話していると、難しい保険用語がほとんど出てこない。それがいつも印象的です。
清水: (身振り手振りを交えて)そこは社員全員で徹底しているところです。「分からないものを、いかに身近に感じてもらうか」が勝負ですから。私たちは「保険のプロ」ですが、お客様は「生活のプロ」です。専門用語で煙に巻くのではなく、お客様の生活の言葉に翻訳して伝える。最近は公式LINEも活用していますが、それはあくまで、顔を合わせられない時間の「心の距離」を縮めるための道具。本質は、やはり膝を突き合わせて話すことにあります。


清水氏の活動は、自社の経営だけに留まりません。「益子町次世代経営者協議会」の会長や、北関東全体の業界団体の重職を務めるなど、そのリーダーシップは地域を牽引する力となっています。その根底にあるのは「自分だけが良ければいい」という考えとは対極にある、謙虚な学びの姿勢です。
加藤: 次世代経営者協議会の方でも、新しい取り組みをされていると聞きました。
清水: はい。今期から会長を仰せつかっています。今年から、セミナーの後に「自社プレゼン」の時間を設けているんです。よくある名刺交換レベルの自己紹介ではなく、15分という時間をかけて、自社の経営計画や、自分がどんな思いで商売をしているかを仲間の前でさらけ出してもらう。
加藤: 15分! それはかなり深いところまで話さないと持ちませんね。
清水: そうなんです。でも、これをやることで「あいつの会社、そんなに熱い想いでやってたのか」って、お互いへの尊敬が生まれるんですよ。㈱仲山商事の仲山社長や、㈱のもり(旧:森林の牧場㈱)益子牧場の菅原マネージャーといった、地域の元気な経営者たちと刺激し合えるのが本当に楽しい。私は地元出身ですが、外から来た方の「益子を良くしたい」という純粋なエネルギーには、いつも背筋が伸びる思いです。
清水氏の経営哲学を表すなら、「保険は『お守り』ではなく『道具(ツール)』である」ということになります。高額な保険料を払っている以上、それはれっきとした「買い物」であり、困った時には徹底的に使い倒すべきもの。そのための「取扱説明書」こそが、清水氏です。
加藤: 「保険は買い物である」という言葉。保険商品は、ともすると「使われない方がいい」と考えがちな中で、非常に誠実で力強い言葉だと思います。
清水: だって、高いお金を払っているんですよ?(笑) 日用品や家電を買ったら、皆さん使いますよね。でも、保険だけは「使い方がわからないから放置」される。それじゃもったいないじゃないですか。だから私はいつもお客様に言います。「保険の取扱説明書は、私です。何でも聞いてください」って。
加藤: 取扱説明書。これほど安心できる言葉はありませんね。
清水: たとえば、冬場の配管の凍結。子供がうっかりテレビを倒して壊してしまった。あるいは、自転車で誰かにぶつかってしまった……。そんな身近な困りごとでも、「あ、これ清水さんに聞けば保険が使えるかも?」と真っ先に顔を思い出してもらえる存在でありたい。よくある「お守り」の話ですが、正月に「家内安全」のお守りを買ったつもりが、実は間違えて「交通安全」を買っていた……なんてことが、保険の世界ではよくあるんです。
加藤: 確かに! 内容をよく理解せずに、とりあえず「お守り」として持っているだけになっている。
清水: そうなんです。それを一度立ち止まって、本当に今のご自身に必要な「道具」なのかを一緒に点検する。そして、いざという時には全力でその道具を動かす。3.11(東日本大震災)の時のことは、今でも忘れられません。事務所の中もぐちゃぐちゃでしたが、翌日にはノートパソコンを抱えて、停電の中でリストを立ち上げました。
加藤: 翌日から、ですか。
清水: はい。地震保険に加入されているお客様70軒を、1軒ずつ回りました。「大丈夫でしたか?」。その一言を届けるために、暗闇の中を車を走らせたんです。益子も様々な被害がありました。大変な状況の中、私を見つけたお客様がパッと明るい表情をされる。あの時の、お互いの手の震えや言葉の温もりは、一生忘れられない。保険の枠を超えて、弁護士さんや医療機関をご紹介することもあります。出口(給付時)でどれだけ負担を減らし、寄り添えるか。それが私のすべてです。
加藤: 最後に、清水社長からこの記事を読んでいる皆様へのメッセージをお願いします。
清水:
保険は、入っているだけではただの『安心感』かもしれません。でも、本来それは皆様の大切な人生や資産、そして愛する家族を守るための、非常に強力な『道具』です。
もし今、あなたがお持ちの保険が、引き出しの奥で眠っている『お守り』になってしまっているのなら、一度立ち止まって、私たちに相談してみませんか。私たちは難しい言葉を使いません。専門家としての知識は、すべて皆様の不安を解消するための『翻訳』として使わせていただきます。
私はこの益子という街で、皆様の『一番身近な相談相手』であり続ける覚悟です。事故や災害といった大きな有事の時はもちろんですが、日常の小さなお困りごとでも、どうぞ気軽に清水保険事務所を頼ってください。
私たちが、あなたの人生の『取扱説明書』として、どんな時でも一番近くで伴走させていただきます。
加藤: プロフェッショナリズムを強く感じるメッセージですね!今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!
清水: ありがとうございました。
