本日は益子地区から大羽地区に続く経が坂の中腹に位置する 日本料理 茶力経ヶ坂さんにお邪魔しています。専務取締役の中村喜信さんよりお話を聞いていきたいと思います。中村さん、よろしくお願いします。
中村:お願いいたします。
中村さん、ここは小高い山の中腹にあって、眺めも良くて、四季折々の風景が楽しめて、 ゆったりとした気分で日本料理を堪能できる場所ですよね。
中村:そうですね。たしかに景色の評価が高くて、この景色が一番楽しみでご来店される方も多いと思いますね。
お庭も紅葉の時期は、もみじとか凄く綺麗ですよね。日本料理に合っていて。
中村:そうですね。いいですよね。
経ヶ坂さんは飲食店ということで、コロナを乗り越えて今でも元気に営業していらっしゃいます。今お客様から一番ご依頼の多いメニューは何ですか。
中村:店内ですと四季折々の季節限定御膳ですね。あとはお弁当の受注が多く入っております。栃木県内はもちろん県外にもかなり配達しているような状況でして。
お弁当はいつ頃から始めたんですか。
中村:やっぱりコロナの自粛時期からなんですよね。コロナ禍中に見よう見まねでやってみて。今までも仕出し弁当はやっていましたけど、やっぱり仕出しの料金だと注文は少ないじゃないですか。 そこから色々研究してやっているうちに、数が大量に出る病院の学会とかに参加できるようになってきたんですよね。
ちょうどコロナ禍で、飲食店さんが営業しづらくてお弁当を始めたところがたくさんあるかと思うんですけど。それが成功したってことですね。
中村:今になってみると、ですけどね。はい。
もう1つ、コロナ禍を乗り越える取り組みとして、新しい施設「アドベンチャービレッジ益子」を始められましたよね。こちらはどんなコンセプトで始まったんですか。
中村:うちの社長が、やはりコロナ禍になって、みんな家に籠っていたじゃないですか。そこで閉鎖的な環境じゃないところ、コロナ禍中でもお子さんを連れて遊びに行ける場所ができたらいいよなって話で。じゃ、下の山を整地して、アスレチックをつくり、アスレチックで遊んでもらおう。お腹が減ったら、子供は焼肉とか好きだから、焼肉屋さんやってみるかという話になったんです。
アドベンチャービレッジ益子には、アスレチックの他に甘味処 峠の茶屋、焼き肉ましこ、バーベキューハウスと4種類の展開をされていますね。それぞれのおススメを紹介していただけますか。
中村:「焼き肉ましこ」の中ですと、オープン当時からやっている980円のランチですかね。
これはかなりボリュームがあるのですが、いまだに値上げしていないんです。
私も先日いただきました。
すごく美味しかったです。
中村:本当ですか。ありがとうございます。
正直、あまり利益が出ないんですけれど、うちの社長がみなさんに喜んでもらえるなら、ということで続けています。
中身は、どんなお肉なんですか。
中村:牛カルビ、豚カルビ、鳥ももですね。それとホルモンなんですけど、マルチョウ(牛の小腸)が一番臭みがないんですよね。若干高いんですけど。歯ごたえがよいのであえて使っています。
980円で4種類のお肉ですか!
中村:賛否両論ありますけどね。 前は土日もランチの値段だったんですけど、土日だけは千円ににさせていただきました。はい。
賛否両論というのは、社内でですか?
中村:いや、お客様です。「もうちょっと量を減らしていいんじゃないの」っていうお声があって。
年配の方とかですと、ホルモンいらないから牛増やしてとか豚増やしてとか仰る方もいます。
それぞれの好みがありますからね。
しかし、焼き肉屋さんのランチで「お肉が多すぎる」という意見が出るって凄いことですね。
中村:まあ、そうですよね。逆に多くないとつまんないですよね。お腹いっぱいにならないんじゃあ。
お席は何席分あるんですか?
中村:4名掛けのテーブルが7席ですね、28名分になります。
坂の中腹で、景色を見ながら食事ができるって、いいですよね。
中村:テラス席ですと、峠の茶屋の景色はまた別格なんですよね。
中村:峠の茶屋は店長の板倉が作っているデザートがおススメなんです。もともと パン屋さんやフレンチの修行をした経験がある人で、デザートの作り方が上手なんですよね。 ですから、その時その時の美味しい材料でデザートを手作りしています。
それは美味しそうですね!良く注文が入るメニューは何ですか。
中村:大体定番はティラミスとかチーズケーキとか。あとはちょっと和風ですと、おしるこ、ぜんざい、抹茶パフェとかでしょうか。
それは美味しそうですね。今度ちゃんとお邪魔します!
バーベキューハウスはどんな施設ですか。
中村:そうですね。あそこは持ち込みも可能なんですよ。ですから、 使用料だけ払っていただいて、飲み物から食材まで持ち込んでいただいて、自由になさる方が多いです。7割くらいはそうでしょうか。 「焼き肉ましこ」で肉・野菜のオーダーも可能なので、手ぶらで来店してもバーベキューが楽しめます。今はそういう方が3割くらいですかね。
自由度が高いですね!アスレチックもあって、家族連れの方にはいいですよね。土日はアスレチック目的の方も多いかと思いますが。
中村:おかげさまで。
全く知らなかったんですが、最近ユーチューバーの方が来たみたいなんですよ。子育て時期の母親が見てるカリスマ的な方がいるらしくて。その方が結構PRしてくれてまして。だからか、最近子連れが多いんですよ!夏休み終わった頃からですかね。おかげさまで支援をしていただいたんだなと思いまして。
お店の方が知らない内に、いつの間にやらバズってるって凄く面白いですよね。
中々いい感じですね!知らないところでこうやって宣伝されているって、面白いですね。
次回はぜひ一声かけてほしいですね。
中村:いや、本当ですよね。そうすれば、商工会の方も呼んじゃって、一緒にコラボで!
経ヶ坂さんがこの場所で始められてから25年ほど経つかと思うんですけれども、こちらに来たきっかけ、歴史も踏まえてお話いただければ。
中村:もともとうちの会社は栃木県の別の場所にあったんです。うちの社長が益子の知人の社長さんと好意にしてまして。
社長自身も益子に何か魅力をすごく感じていて、1人で疲れた時なんかに来ていたらしいんですね。益子町に来ると穏やかになれて、また次の日、事業に集中できると。
おぼろげに「益子で何か起業したいな」と思っているときに、知人の社長から「この山で何かやってみないか」と言われたのがきっかけだった。
当時は丁度地ビールがブームだったので、益子の地ビールをやろうよっていう話しがあったんです。
地ビールのという話があったんですか。それは初耳です。
中村:そう。それで、じゃあ私はドイツに行って勉強して来ようと。ドイツに行きました。
札幌の地ビールの室長とか、今でも有名な全国の名のある方々と一緒になって。丁度あの頃立ち上げた皆さん一緒に飛行機に乗ってドイツに行って、各ビール工場を見回って、いざ帰ってきました。
そしたら、知人の社長とうちの社長で、「やっぱり日本料理店にした方がいいんじゃないの」なんて話で、地ビールではなく日本料理店に切り替わった。
せっかく視察に行かれたのに、それは残念ですね。
中村:まあでも結局、あの後地ビールのブームは終わって、淘汰されてしまった。今でも残っているのはほんの一部ですよね。最近また伸びてきましたけどね。
クラフトビールブームは、確かに一時期よりは落ち着いちゃいました。
中村:でも、ここだけの話、私はまだ諦めてないんです。私、やりたいんです。
下(アドベンチャー施設の展開)が落ち着いたら、改造して地ビールをやろうと思っているんです。
うちの社長が亡くなる前に「ぜひやってくれよ」って頼まれているんで。彼が生きているうちにやらなきゃいけないなと思って。
それは一大プロジェクトですね。
中村:焼肉食べながら地ビールとか、最高ですよね。私も大好きなので。ぜひやってみたいと思うんですよ。
夢を追いかけていますね!
中村:益子に来たきっかけは代表の元々の意思もありましたし、先代の塚本社長と一緒に何か商売がしたかった、ということ。
私も覚えていますが、益子焼つかもとさんとこちらの日本料理と、雰囲気もちょうど良く、相乗効果がありましたね。
中村:オープン当時はすごかったですね。「こんなに人がいて大丈夫なんですか」と心配しちゃった。お店に入りきらなかったですからね。
でも正直な話、飲食店って、もちろん接客もそうですけど、料理する側がいい加減だと、
お客様にすぐバレます。すると一気にお客様がいなくなるんですよね。うちも料理人が変わったら一気にガクッと落ちました。そりゃあすごく落ちましたね。
そのころの私は、調理場になんかいないで、カウンターに偉そうに立ってお客様を誘導しただけだった。
結局どんどんお客様に見放されて。
「これはまずいな」ということで、今は私も調理場に入るようになって。
今は専務が調理もやっていらっしゃるんですよね。
中村:そうです。やっぱり現場に入って、ちゃんと同じことをやらないとスタッフはついてこないですし。
当時はスタッフからは「偉そうにふんぞり返ってんじゃねえ」って言われるのが関の山でしたからね。スタッフを残してさっさと帰って、朝は遅く出勤してきて。そんな馬鹿なこともやっていたんですよ。私。
今はまた評判も良く、人気のお店になっていますよね。見事に立て直しに成功されたんですね。
中村:まだ立て直しには足りないんですけど、なんとか。
せっかくですからね。ここまで戻りつつあるので、新しいお客様にももっと認めてもらって、現状維持よりさらに上に行きたい感じです。
立て直しの流れで、今までも持続化補助金やその他の補助金も使って、色々と取り組んだと思います。国の施策を実際に活用してみてどうでしたか。
中村:効果はありましたよ。商工会さんと一緒に書類作って提出したじゃないですか。あれでチラシとか作りましたもんね。
ちょうどコロナ禍の頃でしたよね。
中村:そうです、ワンコイン弁当なんてやって、一か月ぐらいはよかったんですよね。でも飽きられるんですよ。中身のない弁当って言うのは。
次の手を考えられた、っていう事も含めて、あの補助金は良かったと思いますよ。
あとは、ロールカーテンをつけたり、サーモグラフィーも。やっぱコロナ禍の真っただ中、あの補助金がなければ辛かったですよ。
アドベンチャー施設も事業再構築補助金ですよね。
中村:そうですね。事業再構築補助金がなければ、アドベンチャーのプロジェクトも全然できなかったです。
でも今、物価の高騰で、食材とかも全部値上がりしてます。飲食店がバタバタ潰れてますもんね。他人事じゃないんです。本当に。
影響は大きいですか。
中村:はい。うちも季節限定御膳を始め、いくつかを今月から値上げしたんです。じゃないと本当に保たない。
お客様には申し訳ないんですけど。仕入れてる商品も見直したりもしていますから負担軽減できてるものもあって、なんとか 帳尻を合わせてますね。
値上げせざるを得ない状況は本当に苦しいと思いますけども、ファンの皆様、お客様のご理解はありますか。
中村:今回、『秋御膳』から値段が上がったんですけれども、今のところはご納得いただけていると思います。
申し訳ないですけど、ありがたいです。
仕入れが上がれば仕方ない。価格を上げたくて上げている訳じゃないんですよね。
中村:そうなんですよ。 水道料も光熱費も上がっています。お店を維持してゆくこと自体が大変な時代になっています。
先ほど地ビールの構想の話もいただきましたが、これからこのお店は、中村さんは、どういう風になってゆきたいですか。
中村:私達は大したもんじゃない。益子に生かされていますから、大それたことは言えませんけどね。
やっぱり大切なのはこの環境ですよね。疲れ切った世の中というか、日本中が疲労の真っただ中じゃないですか。
この景色、雰囲気、空気を見て、たった一人でもいい、ちょっと幸せだな、と思ってくれる人を増やしたい。当店に来ることによってそんな人が少しずつ増えてくれればいいんじゃないでしょうか。
夢に向かって頑張っていただければと思います。
中村:頑張ります、本当に。ありがとうございます。
今日はありがとうございました。