今日は、フレンチトーストをメインにしている納屋珈琲ひなたさんにお邪魔をしてます。店主の高橋さんにお話を伺います。よろしくお願い致します。
高橋:よろしくお願い致します。
まず入ってみると、隠れ家的と言いますか、本当に納屋を改装したというのがよくわかるのですけど、この納屋はいつ、どんな風に改装されたんですか。
高橋:東日本大震災の後ですね。翌年の2012年に改装しました。当時はもういらないものがいっぱい入ってて、何があるかわからないような真っ暗なところでしたよ。
お隣がご自宅ですので、本当にいわゆる物置小屋のような状態でしょうか?
高橋:そう。いらないものをみんなここに置いてた。
何年分もの、ということであれば大変ですね。
高橋:何年じゃないですよ。ひいおばあちゃんのものがあったから。昔は味噌とか醤油なんか作ってたでしょ。そういった物もいっぱいあったのよ。
じゃあ、カフェを始めるリノベーションのために、少しずつ少しずつ綺麗になさったんですね。
高橋:最初はリノベーションじゃないですよね。ただ綺麗にしようかって感じで。
カフェのことは考えていなかった?
高橋:まあ綺麗になったら、「あれ?意外とここでできるかな?」って思ったの。
そういう順序ですか。ご家族のご協力もあったのでしょうね。
高橋:いや、もう家族は反対ですよ。こんなところで。真っ暗だし、 屋根のネズミか虫が落っこちてくるかもしれない、って。
でも今は凄くキレイですね。床もすごく清潔で、何かタイルのようなもので装飾されていますね。
高橋:これはね、床が抜けてたところをセメントと益子焼きで埋めたんです。益子焼きを砕いて、敷いてね。
とっても素敵。2階に繋がる階段もとても素敵!
高橋:そうです。ここは元々はしごだったので。きちんとした階段をつけると、場所を取ってしまって1階が使えなくなってしまうのでしばらく着けなかったんですけれども、4年ぐらい経ってから、ここに来たカフェのコーディネーターの原田幹夫さんという方が、この広さで着けられるらせん階段を見つけてくださって。イタリア製なんです。
コーディネーターの方とはどのようにお知り合いになったのですか。
高橋:うちの息子がバイクを乗ってまして、そのバイク仲間の1人だったんです。それで、私がここにお店を開いたので、来てくださったんです。それで、ここをすごく気に入ってくださって。ご自分でも当時宇都宮でVogue'sというお店をやっていたぐらいの方だから、もう少し素敵になるんじゃないかっていうのがあったんでしょうね。それで色々と手ほどきしてくださって。
頼もしいコーディネータがいらしたんですね!
高橋:ちょうど開店して4年くらい。コーヒーとクレープだけじゃちょっとね、って言った時に、「フレンチトーストはどう?」ってアドバイスしてくれた んです。
今のメインメニューになっているフレンチトーストですね?
高橋:そうです、そうです、そうなんです。
でも、そんな風に言われたけれど、私もフレンチトーストって自宅で作ったぐらいで、人様に差し上げられない。どうしようって言ったら、「原宿とか青山とか渋谷の辺りにいいお店がいっぱいあるから、3件ぐらいちょっと行ってみな」って言われて、そのリストをいただいて、それを回って歩きました。
具体的にリストも作ってくれたんですね!ほんとにコーディネートですね。都内のそのお店には何度も行かれたのですか。
高橋:もう、何度も行きましたよね。チラシも頂いてきました。
研究をかさねて、今のフレンチトーストなったんですね!
高橋:そうなんです。商品にするにもね、やっぱり、 ただ焼けばできるわけじゃないでしょう。何回も焼いて、原田さんと、うちのお嫁さんと私と3人で食べ比べして、味を確認して。始めてからもそんな風で、何回か味は変えて、今の形になっています。
商工会でも需要動向調査をさせていただきましたけれど、フレンチトーストは、特にとても美味しいというお声がたくさん書かれていました。全体的にとっても評判が良いということが改めてわかりました。アンケートを読まれて新しい気付きはありましたか。
高橋:お野菜がとても美味しいっていうお声が多かったんですけど。やっぱりそれはね、益子の道の駅の新鮮なお野菜をたっぷり使ってますし。身近に新鮮なものが沢山あって、食材にできるっていうのはすごい強みですよね。
ここから道の駅まで、ほんとに近いですものね。確かに「道の駅ましこ」には新鮮なお野菜がたくさん並んでいます。毎回そちらに買付に行かれるのですか?
高橋:行きます。卵はね、ここのお客さんでもある真岡のたまご屋さんのさくら卵を使ってるの。
卵にもこだわってますね!
高橋:美しいです。それに食べて批評してくれるんですよ。焼き方が硬すぎるとか柔らかすぎるとか。もう少しこういう風にした方がいいとか。
ありがたいお客様ですね。
高橋:焼き方なんかもね。やっぱりフレンチトーストは牛乳と卵で漬け込みますから、やっぱり命ですよね。だから、ありがたいです。
お店の手前には、フレンチトーストの看板があります。私、あれにとってもそそられちゃうんです。
以前は「極上のフレンチトースト」の看板もありましたよね!ネーミングにもそそられます。
高橋:開店して4年で、色々と考えながらフレンチトーストを始めたわけですよ。そして今もやっぱり、「これ以上美味しいものがあるんじゃないか」って思って、色々と考えてるの。
あとは、面白いのはオイルかな。
そう!オイルも美味しい!
高橋:野菜にね、1番合うものは何かって言ったら、やっぱりドレッシングではなくて、自然にその味を感じるものが1番いいって思うの。ほんとに、自分が気に入ったものを使いたい。
5年ぐらいした頃に、東京ビッグサイトのコーヒーフェアに行ったんです。その時に、とっても素晴らしいオリーブオイルに出会って、それからずっと使ってるんです。
翌年頃にそれが市場に出たんですよ。それまでは出なかったの。オーダーで取り寄せてたのね。
だけど、今は出てるから、それを使わせてもらって。
それと、塩・コショウでお野菜は仕立ててます。
とってもシンプルだけど…。
高橋:だけど、1番おいしいと思います。
オイルの味がマイルドなんですよね。癖がない。
中身は、ギリシャ南部で作られてる。コクがあってオリーブの本来の味がすごく良いのがわかる?
ご自分の味にこだわってるのっていいですよね。
高橋:でも、「オリーブオイル何使ってるの?」って言われたのは、まだ8人くらいしかいないかな。
先程コーディネーターの方の話もありましたが、どこかで経営の勉強をなさったのですか?
高橋:私、ジョイフルホンダのアンティークショップに勤めていたんですよ。
そこはね、1人1人に部門を与えられるのね。私は古い家具、イギリスの家具を与えられて。当たり前だけれど、やっぱり売らなくちゃいけないから、色々勉強してね。それで、なんとか頑張って売っていたわけですよ。
だから、お店全体がアンティークのような雰囲気があるのですね。
高橋:そういうところの経験は出ているかもしれない。当時は売る方法から何から何まで自分でやらないといけなかった。自分の部門が売り上げ悪くなると困るじゃないですか。そういうところで鍛えられたことが、やっぱり今1人でやってて身になっているんだと思います。
何事も経験ですね!ご苦労されたことが今に生かされてるんですね。
高橋:お客さんはよく見てるから、あの悪く飾らないようにって言われるんだけど、その飾り方なんかも、やっぱり色々ありますから、気をつけてます。
そういう経験値が、このカフェに詰まってるんですね。
話はつきませんけど、これからのお話も聞きたいと思います。
今すごく楽しくお仕事をなさってるのは、もうビシビシ感じるところなんですけど、これからやってみたい事はありますか?
高橋:最初にクレープから始めたこととつながるんだけれど、このあたりは子供たちが寄るところが全然ないんですよ。私たちが小さい時は、2件も3件も立ち寄りるところがあったじゃないですか、でも今はもう、ほんとに無い。
そこら辺歩いてても、「こんにちは」って言っても、ふーんって行っちゃう子供さんなんかもいるからね。
悲しいなと思うのよね。だからまあ、クレープを始めて、なんか一言でも二言でもおしゃべりして、「じゃ、頑張ってね」とか言えたらいいじゃないですか。
だから、そういう場所を作りたいなと思って。
子どもたちの居場所ですね。
高橋:ほら、今はね、お父さんもお母さんもお勤めしてて、1人で鍵を開けて入って、何だかゲームばっかりやってるのよっていう声が聞こえるから。
お母さんが帰ってくる前に、ここに寄ってね、遊んだり、本読んだり、時には、ちょっと宿題をやったり、そんな場所ができればいいなと思ってるわけです。
人口で言うと、益子の中でも田野地区は少ないところですもんね。
高橋:今年の 4月に入学する小学生もとっても少ないの。このお店のあたりから 一人で帰んなくちゃいけない子もいる。だから、そういう子がもし何かあったら困るじゃない。だから、お母さんが帰ってくるまで、ここで過ごしたり、遊んだり、勉強したり・・・そんなふうになりたい。
いいですね。なんだか、あったかい話ですよね。
高橋:そう。それとやっぱり、まあ徐々に徐々にだけど、やっぱり私もそんな若くないのでね、どこまでできるかわかんない。
それを継続してやってくれる人がいたら嬉しい。私が最初にこの場所を初めて、次の人がこう変えて、代々やってもらえれば いいなーって思うのよ。
高橋さん世代ならではのとてもあったかくなるお話や、こだわりの詰まったフレンチトーストについてのお話を沢山聞けました。貴重なお時間いただきまして、ありがとうございました。これからも元気に営業してくださいね。
高橋:それがね!1番ですよね!末永くね。