益子の魅力的なお店のご紹介、第3弾は、Cheese3(チーズ チーズ チーズ)さんにお邪魔しています。
小さな店舗なのですが、とってもお洒落で可愛らしい。並んでいるチーズケーキも、とってもお洒落で可愛らしいです。
今日は店長の仲野美羽さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。
仲野 美羽:よろしくお願いします。
早速ですがこちらのおススメ商品を一つ教えていただけますか?
仲野 美羽:3層のニューヨークチーズケーキです。
3層のニューヨークチーズケーキ。先ほど頂きまして、とっても美味しかったです。
仲野 美羽:ありがとうございます。
とても人気の品と聞いています。美味しさのポイントはどういうところにありますか。
仲野 美羽: そうですね。1番こだわっているところはトップの層です。名前の通り3層の構造になっていて、名前の通りトップの層が真っ白のレアチーズケーキなんですけど、ゼラチンを使用してないんです。厳選したチーズと生クリームと、そして季節ごとに風味が変わる生のレモンを加えています。
爽やかな風味がしたなと思っていました。
仲野 美羽:そうなんです。レモンは季節ごとに香りが変わってきて、甘い時と酸味が強い時と色々あります。何と言うかライムっぽいような、酢橘っぽいような時も。季節ごとに味が変わるのが 1番美味しいし、いつも新鮮に食べられるのが面白いですね。
仲野美羽さんは20歳になったばかり。ケーキ作りからお店の切り盛りまで行っている。
チーズの産地はどのように決めたのですか?
仲野 美羽:チーズはいろんな国を試したんです。日本産のだとやっぱ北海道のものが一番良くて。あとはアメリカ、フランス、イタリアと試しました。今使っているのはオーストラリアとニュージーランドのものなんですけど、何が違うかと言うと、フランスやヨーロッパ系のチーズはちょっと固くて香りが強いんですね。あまり日本人受けしないというか。
ああ、確かにちょっと癖の強いチーズのイメージはありますね。
仲野 美羽:チーズ好きの私としてはそれも美味しいんですけど。やっぱり多くの日本人の方に受け入れて欲しい、益子の方に受け入れてもらえるようなお店にしたいと思いまして。お店の顔になるケーキを作るにあたって、 オーストラリアとかニュージーランドのものだと、淡白で牛の乳の香りがそのまんまというか…、いい意味で濃厚なんですよね。くどくない濃厚さを私は気に入っていて。それから、どの国のチーズと比べても柔らかいんです。オーストラリアのものは特に口どけがすごく滑らかになる。
チーズ一つとっても、国によってそんなに色々違うんですね。
仲野 美羽:全然違います。実はその国ごとの産地によっても違うんですけど。一番気に入ったのはオーストラリアのチーズ。ニュージーランドのものは若干 ヨーロッパ寄りの癖の強いチーズでちょっと固めなんですけど、オーストラリアの淡泊さに加えて出したいってことで使っています。
なるほど。良いところをちゃんとブレンドして作っているんですね。
今のブレンドに辿り着くまでにどのくらい掛かったのですか?
仲野 美羽:1年くらいです。
一つの商品を生み出すのに1年も!
仲野 美羽:ですね。チーズだけじゃなく、卵やレモンの産地だとか全部。材料を全て1個ずつ確かめて、一番良い組み合わせを探すのに1年かかりました。焼き具合とかもありますし。
栃木や益子に因んだ素材も使っていると聞いていますけれど。
仲野 美羽:
そうですね、卵は益子町の薄羽養鶏場さんのものを使っています。何が良いって、お店からすぐ近くで取れたての卵が使える!もちろん美味しい卵で人気なのは承知していますけど、加えて鮮度が違うと味も変わってきます。黄身のコクとか全然違いますね。
白身も日がたつと臭いが出るので、取れたての卵はとても大切。「今日、あと200個追加で」なんて事もすぐできるのも良くて。味ももちろん良いし、料理に使いやすいです。うちにぴったりの不思議な良さがあります。
不思議な良さ、ですか。何だかいい言葉ですね。親和性が高いという事でしょうか。
仲野 美羽:そうですね。チーズケーキとよく合いますね。
そうして研究を重ねたチーズケーキですが、ちょっと特殊な技法を使っていらっしゃると伺っていますが。
仲野 美羽:
焼き方ですね。ニューヨークチーズケーキはその名前の通り、ニューヨークで主流のチーズケーキでして、天板にお湯を張って焼く『湯煎焼き』をしていて中身が濃厚になるんです。
祖母のお店で作っていたチーズケーキがこのスタイルで、私の原点なんです。祖母のケーキを広めたいっていうのが始まりで、 そこから色々改良をして爽やかなトップ層が出来て、3層になりました。
3層のニューヨークチーズケーキはどんな方に人気がありますか。
仲野 美羽:元々は女性向けにと思っていたんですけど。意外と男性にも気に入っていただいて。ゼラチンを使っていないレアチーズが上に乗っているというのがチーズケーキ好きの方には珍しいみたいで。
私も先ほどいただきましたが、トップの口当たりが滑らかで、真ん中には濃厚な層があって、一番下のクッキーは優しい甘さが残る感じ、このマリアージュが何とも言えず大人っぽい印象というか。 男性にも人気が出てしまったのも頷けます。
仲野 美羽:ありがとうございます。
この場所で始められて今何ヶ月ですか。
仲野 美羽:去年の12月12日オープンだったので、もうすぐ1年になります。
オープンまでの、仲野さんの事を伺ってもよろしいですか。
仲野 美羽:元々料理人志望だったんです。料理人である祖母に憧れていまして。祖母と一緒に仕事がしたいというのを目標に、高校を宇都宮短期大学附属高校の調理科に入学しました。
そして卒業と同時に調理師免許を取得したんです。
調理科時代
益子から通われたんですよね?
仲野 美羽:バスで往復4時間でした。
4時間!毎日!
すごい気力ですね。
仲野 美羽:朝5時に起きて、お弁当作って、6時のバスに乗って。学校で勉強して、帰りは 6時に益子に帰ってきて、そこから祖母のお店でまた勉強して。
当時町内に、おばあ様が店長でいらした「Banda」というカフェバーがありましたね。夕方からそのお店に立っていらっしゃった、と。
仲野 美羽:はい。1日中ずっと料理の勉強してました。
大変でしたけど、今でも戻りたいくらい楽しかったです。
楽しかった、と言い切れるのは凄い事ですね。
仲野 美羽:やっぱり、一番好きだった料理に毎日ずっと触れられるってところが。知らなかったことをいっぱい知れましたし。
学校の講師の先生方は皆プロなので。洋食、和食、中華と知らなかった世界も全部教えていただいて、それだけじゃなく衛生学とか栄養学も教えてもらって、めちゃめちゃ大変だったんですけど。とても充実してました。
調理全般を学ばれたと思うのですが、そこからチーズケーキを選ばれたのはどうしてですか。
仲野 美羽:チーズケーキは元々祖母が10年間営んでいたカフェバーBandaで人気だったの。そのケーキをやりたいなっていう思いはあって。 あとは、私がすごくチーズが好きで。チーズケーキというよりかは、チーズなんですけど。
だから店名がCheese3(チーズ チーズ チーズ)なんですね。
仲野 美羽:
チーズが好きすぎて、高校生の時からチーズ巡りで東京のお店を回ったりしていて。このチーズの良さをどうしたら益子の人たちに教えることができるかなって。それから祖母のチーズケーキの美味しさをもっと広めたくて。
東京で流行りのチーズをこっちに持ってきて、益子で人気の祖母のチーズケーキと合わせたらどうなるかな?っていうワクワクを元に、チーズケーキ専門店にしました。
何だか歴史もあるし、人肌もあってとっても良いですね。
おばあちゃんと一緒にお店に立つのが夢だった、とInstagram等でも語っていらっしゃいます。実際にその夢が叶って、どうですか?
仲野 美羽:
実のところ、結構衝突もあって。10年間ずっと一人で厨房に立ってきた祖母と、チームを組んでの飲食を勉強してきた私とでは、厨房の使い方とか、段取りの違いが結構ありました。
衝突もしたんですけど、祖母が持ってる知識と私が持ってる知識を掛け合わせていくと、なんとなく一人前になっていくような感覚があって。どっちも未熟っていう事ですよね、きっと。それでも足りないところは少しずつ先生方に教えていただいたり。
そういう成長の日々が楽しくて!…あ、お店始めてから成長してちゃダメなのかもしれないんですけど。
ふふふ、私は良いと思いますが。
仲野 美羽:衝突してると言っても、大好きな祖母と好きな食材の話ですから。その話を出し合いながら、試作や試食をしていく時間がすごく楽しかったり。何より、毎日一緒に居られること、毎日一緒にお昼ご飯を食べることが、今の一番の幸せです。
オープンしてもうすぐ1年ということですけれど。準備の時に商工会でいくつかご支援をさせていただきました。商工会の創業セミナーを受講されたり栃木県の経営革新計画にチャレンジなさったり、入念に準備をされていると感じています。その時の思い出を伺ってもよろしいでしょうか。
仲野 美羽: 高卒で開業するにあたって、建物や高熱費とかのお金のことが全く無知で、経費や税金も全然わからなくて。そんな知識不足だった時に創業セミナーに出会って、飲食店をするに当たって考えるべきことや学ぶべきことを、最短かつわかりやすく教えてもらったと思います。 職種が違う人たちがいっぱいいる教室の中で、開業にあたって学んでる方々と知り合って、私も少しずつ学ばせていただいて。何よりお金の計算がとっても大変でした。開業して、どのくらい経費がかかって、どのくらい売り上げればそれが賄えるのか。そんな計算が中々…。
あまり考えたくないことですよね。
仲野 美羽:はい! …あはは、ごめんなさい。でもそれを楽しく教えてくださる先生方がいてくださったので、沢山お世話になりました。
実際に11か月営業してみて、計画と違った事はありますか。
仲野 美羽:
ターゲット層とかコンセプトを頑張って練って作ったお店なんですけど。実際は意外と男性のお客様が多いところでしょうか。
コンセプトに沿ったお客様っていうよりは、益子町に訪れて、ちょっと気になって立ち寄ったというお客様が多くて。それでも、私たちがずっと入念に練ってきたコンセプトを気に入ってくださる方は多いんです。それがやっぱり1番嬉しくて。
『なるほど、益子町の手作りの温かみがぎゅっと詰まったチーズケーキだね』とかって言われた時は、やってきて良かったなって思いました。
やりたいことが伝わるってほんとに嬉しいですよね。
ズバリ、次の夢について聞いても良いですか。
仲野 美羽:次の夢ですか。うん、そうですね。益子初のチーズケーキ専門店として、ネット販売や店舗拡大をして、私たちの作るチーズケーキの味とともに、益子という街をもっと知って欲しいです。お店のファンになってくだされば、どこにあるんだろうって調べるじゃないですか。「あ、益子なんだ。どうやって行くんだろう」みたいな。
そうですね。
仲野 美羽: 「栃木なんだって。じゃあ行ってみる?」みたいな。旅行の途中で益子に寄ってみるっていう案が出たら凄くいいなって思ってて。 チーズケーキには、益子の温かさとか、豊かな食材を頑張って詰め込んでるので、その思いが伝わって行ったらいいなと思っています。
ストレートな、熱い思いがたくさんのインタビューになりました。今日はありがとうございました。