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Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)

2023.11.07お店のこだわり方は、世界一を目指してます

焼きたてを食べてほしい。のんびり、田舎でくつろいでほしい。

今日は益子町の道祖土(さやど)地区で2023年に新しくオープンされたパン屋さんである、Pain de Noémie(パン・ド・ノエミ)さんにお邪魔をしております。

Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)

それでは改めて、オーナー兼ブランジェ(パン職人)でいらっしゃる瀬田直美さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

直美:よろしくお願いします。

一番いい温度を探る

昨日まで陶器市での販売で、大変お疲れかと思います。

直美:確かに疲れましたが、楽しかったです。かなりお客様を並ばせてしまって。申し訳なかったなって。

大人気だったと聞いています。
さて、このお店のおすすめの商品を1つ伺ってもよろしいですか?

直美:それでは、バケットをオススメしたいです。

Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)のバケット

これは、いわゆる「フランスパン」と思ってよいのでしょうか?

直美:そうですね。粉を3種類ブレンドしてます。国内の粉と海外の粉と3種類。それから、生地を発酵させるのに長時間熟成させてます。
発酵させてすぐに焼くのではなくて、一晩は必ず寝かせます。粉に水分が行き渡って、もちっとして美味しくなります。

3種類の粉はどういう風に選んだのですか?

直美:まずはやっぱり味、そして香りですね。自分で探したり、色々な方に教えていただいたり。粉も色んな商品が出るので、大変でした。配合にもよっても味変わりますし、温度や湿度でも変わるので。1番いい温度を探るのはとても難しかったです。

そうして苦心してできたこのバケットですけど、どんな方に人気がありますか?

直美:やはり女性の方が多いですね。地元の方や、最近ですと茨城からお越しになる方も多いです。わざわざ買いに来てくださるのは嬉しいですね。

選んで選んで辿り着いたお店

Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)
Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)
Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)

このお店について、本当に「素敵だ」という一言では言い表せない 魅力があると思っています。この場所で始められたきっかけを伺ってもよいですか?

直美:まず、ここに住む家を建てた時に、将来 何か飲食系のお店をやりたいな、というのを考えてまして。20年くらい前なんですけれど。

計画してから20年経っているお店なんですか!

直美:私、性格というか何と言うか…。逆なんですよ、順番が。普通やりたいことが先に決まるじゃないですか。例えばケーキやパン屋さんをやりたくて、それで物件探すとか。私の場合、自宅で何かやるってことだけ決まってて、スペースだけある、というのがスタートでした。
それで色々修行したりしていく中で、何がやりたいのか探していって、パン屋になりたいなと思いました。

修行というのはどちらかでパンを作るお仕事をなさったということ?

直美:そうですね、フランス料理屋さんでバイトを始め、 もうちょっと勉強したいなと思って製菓学校に行き。そこでパンやケーキとか洋菓子とか色々選択があるんですけど、やっぱりパンを選びました。それでパン屋さんでも働いて色々学んで、今に至るという感じです。

先ほど全部逆という風に仰いましたけど、むしろ王道ではないでしょうか。大きな夢から始まって、選んで歩いていったらだんだんとこの道にたどり着いた。

直美:ですね。選択して選択してって感じ。

自分に合ったものを選んでいったら結果このお店になった。すごく自然で素晴らしい歩みですね。

お店のこだわり方は、世界一を目指してます

そうして出来上がったお店のこだわりについては、どんなところを目指してスタートしましたか?

直美:やっぱりパンが美味しいというのと、焼きたて。それから、やっぱりここでくつろいでほしい、 楽しい時間を過ごしてほしい。そういう楽しさもプラスして考えました。

Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)
Pain de Noemie(パン・ド・ノエミ)

二階が解放されたテラス席になっていますよね。斜面を上手に使われてとてもお洒落ですけれど、その辺りはどういう風に考えられたのですか。

直美:ここで焼きたてを食べてほしい。お店ならすぐ食べれるじゃないですか。それで、ゆっくりしてほしい。のんびり、田舎でくつろいでほしいっていう気持ちですね。

とっても景色がいいですよね。心がほっこりするような。

直美:田んぼばかりですけどね。 でもお隣が濱田庄司さんの参考館ですし、益子らしい眺めですね。皆さん結構、いいですねって言ってくださいますね。 ちょっと階段上がるだけなんですけどね。目線が変わると眺めが変わって。

ご自宅の敷地をちょっと工夫したというだけには見えない、すごくお洒落な佇まいですが。

直美:主人が空間とかデザインとか好きなので、色々こだわって設計しました。デザインはいつも私に相談しつつ舵を取ってくれました。

その辺りは先ほどから横でうずうずしている、ご主人の昌也さんに伺ってみましょう。

昌也:そうですね。ここは自然の良いところもありますけど、お店としてとにかくずば抜けておしゃれな店舗にしようと。元々20何年前から構想があって。すごくオープンスタイルの店にしたい、じゃあ全面ガラス張りにしようと。私、田舎だから田舎風っていうのは嫌いなんですよ。やるからには一流の洒落た店にしたい。
コンセプト自体はもう20年前から作ってあって、店の作り自体も誰かの真似じゃなくてオリジナルの設計デザインでとめていて、全体的な空間を作りました。

直美:家を建てるときに、コンクリート打ちっぱなしの家って良いよねって言ってたんですよ。だけど、色々見ているうちに、手前はコンクリートで奥は木造っていうミックスになりました。

昌也:土地の形を生かして、コンクリートとアイアンと、内部には木を使って。全体的にトータルデザインという形で作っています。

すごい。ご主人の野望が詰まったお店だとよくわかりました。

昌也:こだわりはもう、世界一を目指してます。

売るだけじゃない、帰ってくるお店

お店がオープンした今では、接客を全面的に引き受けていらっしゃるご主人ですけれど、直美オーナーから何か一言ありますか?

直美:もう、感謝です。 ありがたいことに予想以上に忙しくなってしまったので、もう疲れてるんだろうな、と思いますけれど。

昌也:今の時代、「売るだけ」のお店が増えてきちゃったんですけど、接客でお客さんと日常的な会話をしていって、後でお客さんが 戻ってきたときに「ああ帰ってきた。この店は私の店なんだよ」っていう風に思えるようなね。人と人が繋がり集える店っていうのが、この店のコンセプトのもう1つの目的があるんです。人間の関係が崩れている世の中かなってちょっと思えるんで。
昔ながらの八百屋さんみたいなコミュニケーションができるお店を、この令和の世の中にもう1回スタートしたいなって思うの。

益子町は手作りのクラフト作家さんがたくさんいる町ですけれど、そういう方々のお店やギャラリーでのやりとりとか、そういった 方々の感性にすごく近いお話のような気がしますね。

直美:お客様も、何度かリピートしてくださっている方は自由に色々お話ししてきますね。
今日来た方は、このパン美味しかったよとか、また買いに来たよとか。初めて来る方も、他の方からいただいて美味しかったから来ましたとか。結構お話していってくれます。

昌也:よかったら自分家で取った茄子を一個食べて~とか言って持ってきてくれたりね。

直美:イチジク煮たから食べてみてとか。常連さんはそういう感じ。

いいですね、「特別な間柄」がすごく広がっていく感じがします。

直美:ワンちゃんが亡くなって閉じこもりがちだったんだけど、 久々に買いに来たっていう年配の方とか、ご病気だった方が数値が良くなってきたっていう報告があったり。

昌也:お客さんと信頼関係ができてくると、例えばお蕎麦を食べたいお客さんに「どこかいい店知ってる?」とか聞かれると美味しいお店を知らせたり。それで、食べてきたら「あそこ美味しかったよ」って教えてくれるんで面白い。
パン屋さんも「あっちのパン屋さんはこういうパンが美味しいですよ」とか紹介したりね。

なんだか、古くて新しい口コミというか。

直美:そう。今はSNSになっちゃってるけど、そうじゃなくって昔のおしゃべり。

昌也:やっぱり体験して、 この人からの情報なら確かだっていう感覚ね。やっぱり人間ってね、ネットで検索すりゃいいとか、今AIとかいってガンガン情報流れるけど、実際に店に行って、本当にそうだっていうのを確信してどんどん広がる情報が一番安全っていうかね。

はい。そして一番面白いと思います。

今やっと出来たことをしっかり楽しんで

お話はつきませんが、最後のご質問です。

昌也:え?もう終わっちゃうの。もっと喋ってもいいけど。

直美:ちょっと。読まれる皆さんが疲れちゃうでしょ?

最後に益子とお店のこれからについて伺いたいと思います。直美さんは益子の生まれなのですか?

直美:はい。益子の生まれです。途中住んでいない時もありましたが、この家を建てたのをきっかけとしてまた戻ってきました。

益子のどんなところがお気に入りですか?

直美:やっぱり、いろんな方が住んでいるところ。色んな出身地の方が住んでるじゃないですか。陶芸とか芸術関係の方が多いのかと思いますが、そういうのは面白いなって思いますね。海外の方もいらっしゃって。 いろんな考え方があって、大変なところやまとまらない事もあると思いますが、結構オープンじゃないですか。そういうのはいいなと思います。

昌也:都心には少ない、おじいちゃんおばあちゃんからお孫さんまで同居してる家族とかあるから、すごくいいよね。

直美:あとは、お弟子さんが焼き物の勉強に来てるお宅もあったり、海外の方が勉強に来てるお宅もあるし。

お店のこれからの姿はどうでしょう?

直美:そうですね。さっきたくさん喋ってしまいましたけれど、今やっと出来てきたことをしっかり楽しんで、続けていきたいと思います。

本当に今日は貴重なお時間をいただいてありがとうございます。話が尽きませんが…。

昌也:第2ラウンドは?

えー、またの機会にお願いしたいと思います(笑)

  • 聴き手:加藤 拓
    益子町商工会 経営指導員