今日は2024年に益子で新しくリニューアルオープンされた、素敵な木の香りのする本屋さんにお邪魔をしています。
新書コーナーはもちろん、奥の方には文具があり、駄菓子コーナーなんてありますね。
話しているうちに、近所の子どもたちが楽しそうに駄菓子を選んでいます。
手前には小さなギャラリースペースもあり、2階にはかわいいキッズスペースも見えます。
社長の添谷恭平さんにお話を伺おうと思います。よろしくお願いします。
添谷 よろしくお願いします。
まずこちらの書店のおススメポイントを教えていただけますか?
添谷
そうですね。まず店舗外観の色彩なんですが、益子町の伝統釉薬をイメージした4色を基本にした作りになっています。
糠白、青磁、黒、柿赤の4色ですね。益子町に馴染むというか、見た目から「ちょっと佇まいが違うな」っていうのを感じてもらうために、結構こだわってデザインしました。
焼き物の釉薬の色からデザインされているんですね!
添谷
店内ですと、ミニギャラリースペースと、ロフト部分の絵本コーナーが特徴ですね。
ミニギャラリースペースでは、今はちょうど現役の益子中学校の美術の先生と、退職された元校長先生の二人展を開催しております。
書店で絵画が見られるなんて、珍しいですね。
添谷
本は何にでも相性がいいと思うんです。例えば絵画だとしたら絵の書き方ですとか、絵の文化の本だとか。
もしくは益子町にちなんで焼き物の本だとか。
誰でも気軽に立ち寄れるのが良い本屋だと思うので、いろんな作家さん、いろんな方に展示や発表の場として使っていただければいいなと思って作りました。
もう1つ特徴的なのがロフトにあるキッズスペース。今(取材時)もちょうど子どもたちが上がっています。明るい木目調も相まって、とっても楽しい雰囲気に見えます。
添谷
古今東西、子供は高い場所と狭いところが好きだと思うので。
それから、ロフトですから大人の方だと頭がぶつかってしまうので、自然と座ることになります。子供と同じ目線になって絵本を選んでもらえればなと思っています。
自然と子供と同じ目線になる、ということですか。なるほど、考えられていますね。
そしてレジの目の前には駄菓子コーナーがあります。このコーナーは以前の店舗からありましたよね。
添谷
以前の店舗よりも売り場面積が狭くなってしまうので、駄菓子はどうしようかなと思っていたんですけどね。
近所の子どもたちが無くさないでくれというんです。
そういう願いが聞こえてきては、止められないですよね。だから継続して取り扱うことにしました。
さっきも子どもたち楽しそうに選んでいるのがとても印象的でした。
添谷書店さんは道を挟んだ反対側で長い間営業をなさっていたと聞いています。
お店を始められたころからのことを簡単に伺ってもよろしいですか。
添谷
添谷書店は、僕で5代目です。書店が建ったのは、1901年(明治34年)頃と伺っております。
当初は場所が違っていて、益子小学校の坂を下りきったところにあったというのが「益子の歴史」という書籍にも載っています。
その後、いつの間にか旧店舗の場所に移りました。建ったのは前の東京オリンピックの時と伺っているので、60年前ぐらい。
ではおよそ60年間営業なさって今回、道の向かいに新築されたんですね。
添谷
そうですね。
僕が携わっているのは10年程度なので、正直歴史はあまり詳しくはわからないのが本音なんですけどね。
創業されたのは添谷社長のご先祖様になるのですか。
添谷 そうですね。添谷綾乃介、一男、恭一、秀昭、恭平の 5代です。
ずっと同じ地区で業種を変えずにやってらっしゃる。5代続くのは凄いことだなと思います。
添谷
子供の頃は「実家が添谷書店だ」っていうのがすごい自慢でした。
当時はVHSビデオのレンタルをしてたり、ストⅡの個体があったりしましたよ。
ストⅡの個体とは…?
添谷
いわゆるアーケードゲーム機です。
他にも、ゲームの販売をしたりカードの販売をしたり。
「時代の先端を行っている」「最先端の真新しい情報に触れられる」と子ども心に思っていた。
そんな実家にすごく誇りを感じてました。
当時から、常に子どもたち向けの商品というか、子どもへのまなざしがあったんですね。
添谷 そうかもしれませんね。
書籍販売の歴史で言うと、社長が生きてきた世代は今日に至るまでかなり厳しい状態に差し掛かっていると思います。率直に伺いますが、お店の経営的な状況はどうでしたか。
添谷
そうですね。
やっぱり年々本は売れなくなってきていますし、益子町の人口も減っています。
本だけで商売 をしていくのは無謀な時代ですね。
正直、無理だと思います。
でも、その中でやっぱり益子町の本屋は誰かしらが担わないといけないものだとも思います。町のインフラとして。
ですので、本屋さんですが、本の販売だけで食べて行こうとは思っていません。
この取材で聞いてしまってよいのか迷いますが…、
本がメインの売れ筋でないすると、経営としてはどういう事を取り組んでいらっしゃるんですか。
添谷 外商がメインですね。もちろん本を納めることもありますけれども、基本的には学校の教材でして、学校にあるもの全てを取り扱える商社としての役割を担っております。
「学校にあるもの全て」と言われても、ちょっとピンとこないんですが、例えばどんな商品ですか。
添谷 例えば、校庭の片隅にある百葉箱。プールの真ん中にあるコースロープ。顕微鏡。人体模型。 保健室にあるベッド、体重計、身長計。黒板。机椅子、教壇。学校にあるものはおよそ全て取り扱えると思います。
凄いですね。
そういった多種多様な商品を取り扱って、先生方からの評判はいかがですか。
添谷
本当に今、学校の先生方は多忙を極めています。
様々な事が起きて仕事量が増えていく中、先生がどうしてもできないところを手となり足となり動くのが私の使命だと思うので。
感謝された時には凄くやり甲斐がありますし、嬉しいなと思えます。
改めて、今回一大決心をしたリニューアルだったと思います。
今後添谷書店をどのようにして行きたいですか。
添谷
そうですね。
新店を作るにあたって、本の品揃えを一新したんです。
今までは益子の特性に合わせて美術書に力を入れた書店だったんですけど、
当店にはどんなお客様がいるのか、益子町にはどんな読者層がいるのかを一度洗い出したいと思いまして。
とりあえず満遍ない品揃えをして、ちょっとずつ品揃えを見定めていこうと思います。
データを収集して、より益子町の人たちに寄り添えるラインナップの本屋さんになっていきたいと思うんです。
町のインフラとしての役割を担いたい、という事ですね。
添谷
はい。
相変わらず美術は他のジャンルに比べたらちょっと手厚いですけど。
他にも児童書や実用書、ビジネス書、コミック。
尖った商品を並べるのは簡単なんですけど、それはちょっとやりたくないというか。
尖りすぎたらインフラとは呼べないですものね。
添谷 そうですね。尖りすぎて、敷居が高くならないように気を付けています。
今日は貴重なお時間をいただきました。
新しいこの店舗も、きっとたくさんの方に愛されてゆくだろうと思います。
今日はありがとうございました。
添谷 ありがとうございました。