本日は益子の道祖土地区にあります古家具や古雑貨を取り扱うAntiques道具屋さんにやってきました。いつ来てもとっても暖かくて綺麗なお店で、そしてピカピカの古道具がところ狭しと置かれています。
店内にはゆったりとジャズが流れていて、とても落ち着きます。いつもジャズなんでしょうか…
後藤:
ジャズが多いですね。母がお店を始めた時からジャズを流していたので、その流れで、今もずっとジャズを流しています。
もちろんスタッフが聞きたいジャンルの音楽を流す時も多々あります。基本自由です!あははは。
というわけで、今日は店主の後藤愛美さんにお話を伺おうと思います。よろしくお願いします。
後藤: 宜しくお願いします。
こちらのお店はいつ来ても楽しくて、いつもとっても良いなあと感じるのですが。
お客様はどんな方が多いですか?
後藤:
事業者さんと一般の方で、ちょうど半々ぐらいです。
事業者さんで言うと、建築関係の方や同業者さんです。
事業者さんはどんなお買い方をされるんですか。
後藤: 同業者さんは古物の仕入れ、店舗関係の方は什器や店舗に飾るものとか。建築関係の方は店舗や住宅で使う建具や床板、そういうものを探しに来る方が多いです。
品物はいつ頃のものが多いんでしょう。
後藤: 明治時代から昭和のものまで取り揃えています。江戸以前のものも少し。
そういったものは仕入れるのも目利きが必要かと思いますが、どういう風に仕入れていらっしゃるのですか。
後藤:
うちは市場は全く通さないんです。
骨董屋さんって色々な仕入れの方法がありますが、うちは市場は行かないで一般の方からお電話やメールをいただいて、直接買い取らせていただくような買い出しスタイルが多いです。
一般の方のご自宅にあるものを直接買い取って、手入れをするんですね。
後藤:
そうですね。クリーニング、メンテナンスをしてまた次に使ってくださる方に繋いでいます。
一つ一つに歴史があるというか。また大切に使ってくださる方に巡って行くと嬉しいです。
古物の特徴はどんなところでしょうか。
後藤:
古物の特徴…。
大きな特徴はやはり何十年も前に誰かが誰かの為に作った、というロマン。
例えば、想像してみてください。江戸時代に着物を着てちょんまげを結った職人さんが物を作るところを。それだけで、何か凄いですよね。
そして材料やデザインが良いものが多い。
うちで働いてるスタッフ全員の共通意識で、目利きしてますね。
目利きというととっても興味深い仕事なのですが、ここだけの話、どういうところを見るんですか?
後藤:
えー!? どこ見る…、ねえ。例えば、作り。それから材料。
材料についても、細かく言えば木取りが素晴らしいもの、そもそも間違えているものもありますし。
木取り、と言いますと?
後藤:
ちょっと専門的になっちゃいますが、その木の裏表の使い方、切り出し方が正しいかどうか。
元々“こう使わないといけない”っていう決まりがあって、昔の人はその通りに木の性質をちゃんと活かして作っていることが多いんです。
勿論現在も同じなんですが。
なるほどー!と驚く作りのものもあります。びっくりするような細かい細工が施されていたり。
建具に関してもすごく良い物も多いんですよ。材料も何年も乾かして。
製品にするまでの過程がすごくちゃんとしているものが多いんです。凄くナチュラルですし、科学的なものも使っていない。木を切るのも機械じゃなくノコギリですし。
そういうチェックをして、ご要望のあるお客様に見せるんですね。
後藤:
そうですね。
良いと思ったものをお手入れして、お店に並べてご覧いただきます。説明も添えています。
そのもののバックグラウンドが分かっているものはご説明もしています。
お手入れと言うと、具体的にどういった作業なんですか?
後藤: 例えばそこにあるガラス戸、100年前のガラスが入っているんですけど、全部1枚1枚外して手作業で徹底的に綺麗にします。
…素人ですと外すだけで壊してしまいそうですね。
後藤: そうなんです。丁寧に丁寧に磨きます。今のお家に入れても大丈夫なぐらい綺麗にしてお店に並べています。
そうなんですか!なんだか途端に、周りにある一品一品に愛着を感じますね。
後藤: そうですよ。愛着が湧いてしまって売りたくないものもいっぱいあります!
益子町は観光地でもありますが、一般のお客様にはどういう品物が好まれていますか?
後藤:
一般のお客様はもう本当に色々なんですけど。
例えば古い益子焼きとか。ヴィンテージくらいの。
すごく古いものが好きな方は、江戸終わりから明治ぐらいの、初期の益子焼を探される方もいます。
ただそういったものは、普段使いの用途だとなかなか難しいので。資料的に価値があったり、見て楽しむ感じです。
商品点数で言うと、いくつぐらいのお品物があるんですか?
後藤:
ねー。いくつあるんだろ…?
数えきれない。あははは…。
でも来てくれたお客様は「ほんとに楽しい、いいお店!」って言ってくれるのがとっても嬉しいです。
それが励みにもなるし、支えにもなっています。
こちらのお店は、この場所で始められてからもう長いんですか。
後藤: 20年は経ちましたね。
お店は当初から骨董品を取り扱う今のスタイルだったのでしょうか。
後藤:
そうです。オープン当時から古いもの屋さんです。
最初に始めたのは父です。父が20代の頃からですね。
最初は益子町でなくて、黒磯(注:栃木県の北部、現在の那須塩原市)でした。結婚して益子に移ってきて、もう50年経ったんじゃないでしょうか。
同じ道祖土地区(注:益子町内のエリア)に「おお屋」というお店がありますよね。
あちらは今もお父様が経営されているそうですね。
後藤:
そうなんです。あちらは古美術、美術品が多いです。
こっちはもっと、カジュアルというか、説明が難しいけど、扱うものが全然違います。
高価なものも無くはないですが、割合は少ないです。
長い間お店を運営して、いかがですか?
後藤:
そうですね。この10年で古物が皆さんの生活に浸透しているのを感じます。
昔は本当に、趣味性の強いものだったんです、このジャンルって。
でも今は、普通に買い物に行くところの1つになっている。
みんな、生活の中に取り入れてくれるようになったと感じます。
それはすごい変化ですね。
後藤:
これは全国的に見ても同じだと思います。
そんなに古道具のハードルが高くないし、実用のインテリアとして認められた。
とっても嬉しい変化です。
ということは、若いお客様も結構増えているんですか?
後藤:
いらしてます。
中学生の頃から来て、今大人になっても通ってくれるお客様もいらっしゃいますよ。
最初は家族で来て、だんだん一人でも来るようになったり。
面白いですね。古物が本当に若い人に身近なものになってきているんですね。
こちらのお店は益子でも人気のお店のひとつです。
長く続けてほしいと思いますが。これからの事はどう考えていますか。
後藤:
う~ん。そんな大層なことは無いんだけど…。
少しでもみんなが 探してるようなものを見つけて並べられれば良いなと思います。
益子町全体としても、益子焼だけでなく色々な手作り品を売るお店が増えていますよね。
後藤:
そうですね、色々なお店で手仕事のものを出されていて、ほんとに楽しいと思いますよ。
すごく多様化してる。
いらっしゃる方も、益子焼以外の目的で来る方が増えてますよね。
古物屋さんも、この10年で凄く増えたので、「益子焼と古物を見に来ました」っていう方が多いんですよ。
古物巡りで益子に足を運んでくれたら嬉しいな。
それは嬉しいですね!そうなってゆくように、一緒に頑張りましょう。
ありがとうございました!