今回は、益子の中でも特に長閑な場所、森林ノ牧場さんにお邪魔しています。
柔らかい土と、広がる風景。そして牛の鳴き声。なんとも癒されますね。
今日お話を聞かせていただくのは、森林ノ牧場の益子牧場マネージャーの菅原ゆり恵さんです。どうぞよろしくお願いします。
菅原: どうぞよろしくお願いします。
菅原さんは益子出身ではないと伺っています。どちらからいらしたんですか。
菅原:出身は宮城県の仙台です。
生まれ育ちは宮城で、大学は岩手の大学に行っていて。
その後は、就職で北海道に行って。
どんどん北に行っていますね。
菅原: あはは。その後転職で岩手に戻り。さらに転職で千葉まで降り。で、栃木に4年前に来ました。
なんだか、日本の東半分を股にかけていますね。
益子にいらしたのは4年前という事ですが。
菅原:
20021年の10月です。今の会社(森林ノ牧場)が第2牧場を始めるっていうので。その土地が益子でした。
益子に牧場を作るために私は今の会社に転職をしたのです。
元々、森林ノ牧場を2013年ぐらいから知っていて、
興味はあったのですが、リクルートのタイミングが合わず、ただのファンとしてずっと見ていました。そのうち2018年か19年ぐらいに1度求人が出て、転職のタイミングではなかったのですが、コンタクトを取りたくて応募しました。
その時の、代表の山川との面接で第2牧場の構想を聞きました。それで牧場の立ち上げに興味があるかっていうお話がありました。
現社長とはその頃からのお付き合いなんですね。
菅原:
そう。すごく楽しそうで、挑戦してみたいと思ったので、「タイミングが合えば是非お願いします」と話していて。
その当時は関西の方に候補地があったんです。
最初の候補地は益子じゃなかったんですね。
菅原:
私はもう、日本中どこでも行きたいというか、どこが候補地だったとしてもやりたかったので。
そこに向けて前職の退職手続きなどをして、やっと入社したのが2020年の8月でした。
森林ノ牧場さんは那須に本社があると伺っています。
そもそもなぜ益子が選ばれたのでしょう。
菅原:
益子を選んだ理由は、いろいろなご縁があったからですが、そもそも代表の山川が益子の景色、里山の風景をすごく好きで。
学生時代に益子に部活の遠征とかで来たことがあったそうで。
加えて、耕作放棄されたこの土地を紹介していただいたので。もう、本当に出会いですよね。
いいですね。当時メディアにもいくつか載っていた記憶があります。
その頃から比べると、ずいぶん牛の数も増えたように思うんですが、今何頭くらいになったんですか。
菅原:
最初は10頭から始まって、今は25頭ですね。
本社(那須)は今23頭ぐらいなので、ほぼ同じですね。
もう本社と同じぐらいの規模に育っていらっしゃる。凄い事ですね。
ここはすごく広大な雰囲気がありまして。いわゆる観光牧場ともちょっと違う、のどかな雰囲気があると思います。
菅原さんが一番好きなところはどんな所ですか?
菅原: え~? 好きなところ…。この、かわいい牛たち。
やっぱり牛の1頭1頭ですか。
菅原:
ほんとに個性が豊かで。 那須の子とも性格が違いますし。
那須から連れてきた子で、こっちに来て性格が変わった子もいたり。
環境や関わる人によって牛って変わるので。
牛の性格が変わっちゃうんですか。
菅原:
ある子は那須にいた時は臆病な性格だったんです。那須にはその子よりも立場が上の牛がいたから、ビクビク過ごしていて。
それが、益子に来たらその子が1番年長者のグループになって。群れのリーダーになったんですよ。
リーダーになったら、臆病だけど、ちゃんとみんなを引き連れる強い存在になって。顔つきも那須にいた時はきつい感じだったけど、柔らかい柔和な表情になったかな。
顔つきまで変わるんですか!なんだか私には分からない話になってきたような…。
菅原: 人もそうですけどね。環境やストレスによって顔つきって変わりますよね。
言われてみればそうですね。
ちなみに今目の前で草を食べているこの子はどういう子なんですか。
菅原:
(牛を見て)おーちゃんは最近那須から来た子です。
牛って、群れの外から来ると必ず一通り序列争いをするんですよ。
新しく入った子って序列が下の方になりがちなんですけど、おーちゃんはその当時のリーダーに食ってかかって。
へえー、ちょっと我の強いタイプ?
菅原:
そうです。意外と我が強くて。
今は…、そうですね。リーダーにはなってないですけど、上から3番目くらいのポジションに居ますね。
面白いな~。全然知らない世界が広がってました。
菅原: ふふふ、そうですか?
この間、「益子deカレー」という益子町の中心部でカレーフェスが企画されました。
実は菅原さんが企画実行委員長でいらっしゃったと聞いています。
菅原: はい。
街の人たちや地域の方々を巻き込んで、楽しませたイベントでした。
観光協会の方など、沢山働いていらっしゃいました。
率直にお聞きしますけど、なんであんなことが出来たんですか?なんでやろうと思ったんでしょう?
菅原:
そもそも、私も含めてうちのスタッフはみんな益子の人間ではなくて外から移住してきています。
なので、知り合いもいないし、もちろん友達もいない。仕事をしているだけだと、こんな辺鄙な場所なので繋がりもできない。なので、元々ちっちゃくイベントというか、月に1回交流したりレクリエーションのようなことをやっていたのですが、自分たちだけで集まっていても中々コミュニティが広がっていかないんです。
それで地域の方も巻き込んでなにかやりたいなっていう思いがあったんですよ。
なるほど、社内で元々イベント企画を行っていたんですか。
菅原:
はい。一方で町の方とお話する中で、コロナ禍でいろんなイベントが無くなってしまった話を聞きました。
元々こんなマルシェがあったんだよとか、こんなイベント、企画があったんだよと聞く機会があって。
話された皆さんも、またそういったイベントをやりたいっておっしゃっていたんですよ。
なので、じゃあ一緒にやったらいいかなって思って。
益子町は、陶器がとても有名ですけど、それ以外にも何でもできる町じゃないですか。
生産物が何でもあるというか。
わかります。一個だけで括れない手作りの小さなクラフトが沢山ありますよね。
菅原:
益子の皆さんにお話を聞くと、 陶器しかない、益子といえば!というものがない、といったようにネガティブに評価されてて。私は外から来た人間なので、逆にそれって凄いことだなと思っていて。
なんでも出来るって、凄くないですか?
確かにそうかもしれない。
菅原:
すごいポテンシャルがあるなって思ったので。
じゃあ、何か食とかテーマを決めて、イベントをやっていけたらいいな って思って。
陶器市ってやっぱり町外の方が楽しむイベントなので、町内や近隣地域の方が楽しめるイベントをやりたいなって。
そういう目的がある中で、観光協会の神田さんと相談してああいったものが出来上がりました。
当日はもう想定よりかなり多くご来場されて、大行列でしたよね。
菅原さんは当日はゴミを片付けたり、色々クルクルと働いていらっしゃいましたけど、当日のことはどうでしたか。
菅原:
私も正直あそこまで沢山の方が来てくださると思わなかったので、想定外の混み具合でした。嬉しかったですが、色々準備不足だったなと反省点もあります。
そんな中でも皆さん優しいんですよね。
ご飯の炊き上がりをお待たせしてしまったり、そういうことに対して、 栃木県民の方は全然怒りをあらわにしないというか。
すごい事だと思います。それが当日は衝撃で。
ほんとに優しくて!
「あと何分お待たせします」とか、最終的にご飯がなくなってしまってお断りした方も何十人もいらっしゃったんです。
それに対しても優しくて。
もしこれが都内だったら、すごいクレームが来るような状況だったと思います。
益子の方々の人柄なのか、クレームが無かったのが衝撃でした。
色々な県を渡り歩いている菅原さんだからこそ見える地域性ですね。
菅原: 当日は色々できなかったことも多い中で、皆さんが楽しんでくださったのは、ひとえに出店していただいた方と、来ていただいた方の協力の賜物だなと思います。
最後に、菅原さんはこの牧場でこれからどんなことしていきたいですか。
菅原:
この牧場を立ち上げた時のセレモニーで、益子町の方にとって「森林ノ牧場が益子に来て良かった」って言ってくださる場所にしたい、という表明をしたんですよ。
でも実際、それがどういう形なのか正直当時は見えていなくて。
今もはっきり見えてるわけではないのですが、例えばこう、牛が草を食む景色って普段見られないと思うんです。
そういうものを見ていただく機会を作ったり、気軽に来ていただけるような施設としての役割が果たせたらいいなとは思っています。
次の展開としてはそういう場所や加工場を作る事も考えてます。
こちらは生産拠点として始まったんですものね。
菅原:
そうです。次のステップとしては加工も出来るようにとは考えていて、将来的にはここに人が 集まる場所として選んでもらえるような場所にしたいです。
社長が最初にこの風景、里山の感じをすごく気に入って魅力を感じたように、それをさらに多くの方と共有できるような、そんな事を考えています。
菅原さんの実行力は折り紙付きですから、楽しみですね!
貴重なお話いただきました。今日はありがとうございました。
菅原: ありがとうございました。