本日はご家族で益子焼を作っている陶芸作家のアトリエにお邪魔をしております。島田陶芸苑さんの3人にお話を伺いたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。
恭子 :島田恭子です。陶芸をすることになったのは、益子の里山の美しさに惹かれ、ここに住みたいと思ったのがきっかけです。それから47年になります。
東秋 :島田東秋です。22歳の時に益子の窯業指導所に通いまして、 陶芸を始めて今20年目の年を迎えました。よろしくお願いいたします。
琴絵 :島田琴絵です。大学卒業後は一度違う仕事に就いたのですが、やはり焼き物がやりたくなって東京の八王子で10年ぐらい焼き物をやっていました。その後、家族で益子に移住をしてきて、今は実家で作陶をしています。
みなさまありがとうございます。よろしくお願いいたします。
まず、島田陶芸苑さんのこれまでの事について伺いたいと思います。島田さんご家族は現在、『アトリエ桜野』という名で、4人の作品を発表していらっしゃいますね。
恭子:そうですね。子供たちも陶芸の仕事をするようになって、主人と私と、娘と息子、それぞれの作品を展示するギャラリーを作ったことがきっかけになり、『アトリエ桜野』と工房名をつけました。
家業としてはどれくらいの歴史があるのですか?
恭子:主人の祖父が、ここの土地に窯元から分家してきたのが昭和の元年ですから、それから数えると約100年近くでしょうか。主人が3代目、息子が4代目になります。
約100年!凄いですね。すると恭子さんが関わったのはその歴史の後半からになる訳ですね?
恭子:はい、栃木県窯業指導所を卒業後、結婚しました。その頃島田陶芸苑は、大窯として生活雑器の大量生産をしていました。その後、主人の代になり、個人作家としてそれぞれ活動するようになりました。
それでお2人のお子様に恵まれて、お2人とも作家として成長されたのですね。
恭子:そうです。子どもは3人で、上の二人が同じ仕事をしてくれています。
素敵ですね、とっても。
取材の日にも体験教室の申し込みが。熱心に教える恭子さん(左)
取材の日にも体験教室の申し込みが。熱心に教える恭子さん(上)
現在ご自宅の敷地を開放なさって、ギャラリーや体験教室、そして新しい取り組みも進められていると伺ってます。どうしてそういう取り組みを行うことになったのか、お話しいただけますか。
恭子:そうですね。この体験教室の工房は元々作業場だったのですが、最近は使われていませんでした。敷地も広いし、単純に維持していくことも難しい。それなら、魅力が増すように何か出来ないかな、と思っていました。それから、今まで訪れたお客様などから体験をしてみたいというお声をいただいていました。 ただやはり、自分たちの作業している工房で体験を、というのは難しかったものですから。それで、この場所を新たに陶芸体験教室にして、多くの方に来てもらえたらいいかなと思ったのがきっかけでした。
琴絵さんは、体験教室のメインスタッフとして働いていらっしゃると聞いています。実際に行ってみて、改めて分かったことや、新しい発見はありましたか?
琴絵:そうですね。今までは自分の作品を作るということだったので、人に教えることが初めてで不安もありました。でも実際にやってみると、お客様から「とても楽しかった。」とか「風景を見ながらのんびり作ることができました。」などと言っていただいて、私もとても嬉しく、やりがいを感じています。既に何回か来てくださる方もいて、やってよかったなって思います。
初めてろくろを触る方もいらっしゃると思いますが、そういう方々はどういう感想をお持ちになりますか。
琴絵:そうですね、皆さん最初は、自分にはできないんじゃないかと心配されているのですが、うちでは初めに動画を見ていただいて、それから一緒に指導しながら作業を進めていきます。時間をかけて、ゆっくり作っていただくので、初めての方でも作品を作り上げて、最後には「楽しかった!!」と、とても喜んでいらっしゃるのが、嬉しいですね。
終始おだやかな空気が流れる敷地内
柔らかい物腰で教える琴絵さん(左)と、慣れない取材にも丁寧に応える東秋さん(右)
柔らかい物腰で教える琴絵さん(上)と、慣れない取材にも丁寧に応える東秋さん(下)
そうして始まったこの体験教室。すぐ隣には4人の作品が並ぶギャラリーがありますよね。一つのギャラリーには緋陶志(ひとし)さんと恭子さんご夫婦の作品が。そしてもう一つには琴絵さんと東秋さんご姉弟の作品が。それから今ちょうど工事中の、新たなこだわりのスペースの事も。改めて伺ってもよろしいですか?
琴絵:うちの1番の魅力っていうのは、この自然、風景だと思っているんです。
綺麗ですものね、この敷地全体を囲む緑が。
琴絵:この静かな環境の中で体験をしていただいたり、私たちの作品を見ていただいたりする他に、企画展などのイベントを出来るスペースを新設しようと思っています。また焼き物だけでなく、工芸や絵画などの展示を始め、その他にも色々な企画ができるのではないかなと思っています。皆さんに、この敷地全体として楽しんでいただけるような場所になればいいなと思っています。
恭子:それから、小さなところですけれども、絵本を揃えた「さくらの文庫」も準備中です。もう少しで完成するのですが、お子さんたちも、絵本を見ながら楽しめる空間になれば良いと思っています。
敷地に入って出ていくまでに本当に気持ちが新しくなるというか。心が洗れるような 場所だなと、いつもお邪魔して思っています。さらに魅力あふれる場所になるという事で、本当に嬉しいです。
それでは、今後のご自身について伺いたいと思います。東秋さんは作家として20年になると伺いましたが、陶芸作家としてこれからどういう気持ちで取り組んでいきたいと思っていますか。
東秋:そうですね。今後は益々、生まれ育った益子という町の魅力を、 自分の作った作品を通して発信できるような仕事をしていきたいなと。
ご自分の作品は、どんな方々に見てほしいですか?
東秋:最近は若い方も陶芸に魅力を感じる方が多くなってきました。そんな方々にもこれから見て買っていただけるような作品を作っていきたいですね。
東秋さんと琴絵さんのギャラリー
若い方が体験教室にいらっしゃったり、今まで全然陶芸に興味がなかった方がギャラリーでご自分の作品に触れるような機会も少しずつ増えてきたと思いますが、そういう方々との交流の中で、印象的だったことはありますか?
東秋:そうですね。自分が思っていた感想とは違う感想がある時ですね。可愛いとか、綺麗とか言ってくれると、やっぱり嬉しく思います。
自分の作品だけど、自分と違う見方で愛でてくれる。そういう時ってすごく嬉しいでしょうね。
恭子さんの作品(左・右)と緋陶志(ひとし)さんの作品(中央右)
恭子さんの作品(上・下)と緋陶志(ひとし)さんの作品(中央右)
最後に、恭子さんに伺いたいと思います。
今後この益子地域について、ご自分や次の世代のお2人がどういう風に関わっていくか、またどうなっていって欲しいという希望はありますか?
恭子:こうして、次の世代の息子と娘が私と同じ仕事である焼き物に携わってくれたのは、とても嬉しく思っています。二人には焼き物屋として、その生業を誇りとし、益子の魅力の一つとなれるように頑張ってほしいと思っています。
焼き物屋という一言に、本当に歴史も誇りも感じたインタビューになりました。
今日は本当にありがとうございました。