本日は益子駅前で電気屋さんを営んでいらっしゃいます、山崎電気商会さんにお邪魔をしています。
専務の山﨑純(やまざきあつし)さんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
まずこちら電気商会さんは、いわゆる「町の電気屋さん」というふうに言って良いのでしょうか。
山﨑:
そうですね。ただ「町の電気屋さん」業が全体の3割ぐらいですね。
6割くらいがBtoB(注:企業との取引をする仕事)です。
あとは1割がBtoGとその他でしょうか。
“BtoG”というのはちょっと聞き馴染みがないですが、どういうお仕事ですか。
山﨑:
公共工事のことですね。
補助金を活用した電気工事なんですけれども、LEDの交換や空調工事でCO2削減のお手伝いをさせて頂いたりしています。
では益子町内の企業さんを飛び回っていらっしゃるんですね。
山﨑: いや、お客様は関東甲信越のエリアなので、下は長野ぐらいから上は新潟ぐらいまで、飛び回りますよ。
それは凄く広い商圏ですね!
まさに飛び回ってお仕事をされていますね~!
山﨑: そうですね。今、楽しんでます!
専務お一人で行っているわけではないんですよね。
従業員さんがいらっしゃるんですか。
山﨑:
そうです。従業員と一緒に行っています。
チームは僕を入れて3人で、出来るだけ若い子2人で回してます。
「町の電気屋さん」では括れないスケール感でお仕事をされていますね。
ズバリ会社の野望は何ですか?
山﨑: 野望はもう、レインボー企業ですね。
レインボー企業、ですか??
山﨑: そうです。白と黒っていうのはよく聞きますよね。
いわゆるホワイト企業とブラック企業という事ですか?
山﨑:
そうですね。でもそれだけでなくて。
よく十人十色って言うじゃないですか。
人に合わせて色がある。
企業に勤める人の色であれば7色でも少ないかなとは思うんですけども。
個人の色が、そのまま色になるという事ですね?
山﨑:
そうですね。
個人の色を挟んでいけば虹色になるかなっていうことで、レインボー企業を目指してます。
面白いですね。
黒とか白じゃなくて、個人の色を出すんだってことですか。
具体的にはどんなことをやってらっしゃるんですか。
山﨑:
うちは働き方も自由なんですよ。
休みの取り方も自由なんですけれども、あとはやりたいことがあったら言ってもらって、「じゃあやろうぜ」と僕も一緒にやっていく形です。
例えばどんなことがありましたか。
山﨑:
例えば今までですと、業務用エアコンの大きいものの設置はやったことなかったんですよね。栃木県で2件しかつけた実績がないエアコンとかがあった。
それを茨城県で依頼があって。
で、それを「みんなでやってみよう」でチャレンジしました。
栃木県で2件しか事例がないというのは、並外れて大きいという事ですか?
山﨑:
いや、すごくマニアックな機械なんです。例が無いから仕事としては怖いわけです。
そういう話が営業していて出てきた時に、他社さんは断る案件かもしれないけれど、うちはやってみようと。
その時、2000万円ぐらいの仕事だったんですけど、納期1ヶ月で終わらなかったら1000万円払わなきゃいけなかったんですよ。契約書違反になっちゃうんで。
あまりにも怖すぎたんで、その時は自分の指1本を落としてでも違約金払えるようにして、自分にその1ヶ月間だけ保険をちょっと多めにかけてやりました。
…ちょっとディープな話になってきましたね…
山﨑: 無事に納期通りに終わりましたけど、失敗してたら、僕は今頃指1本なかった。
任侠の世界ですね!
山﨑: でもそのぐらい覚悟がないと新しい仕事ってできないと思うんです。
それを最初にやりたいって言ったのは専務ですか。
山﨑: いや、僕じゃないと思います。やれるかな?っていうのを従業員のみんなで話をしたんですよ。それで、じゃあやってみようかっていうことに。
お客様も喜ばれたんじゃないですか。
山﨑:
いや、正直に言えばお客様がうちを試したんです。
その試験に合格した感じですね。
その後のお付き合いは、おかげですごく良好になりました。
相変わらず無茶振りのような依頼もしてきますけど、とても楽しくやらせてもらってます。
勢いを感じる山崎電気商会ですが、これからどんな企業にしていきたいですか。
というのは、いわゆる「町の電気屋さん」って一般には大手に押されて厳しい経営を迫られていると認識しています。
どんなかじ取りをされるおつもりですか。
山﨑:
「町の電気屋さん」は、まず個人のお客様の満足度を上げる事を長らく意識してきたんですよね。平たく言えば60代、70代の方に寄り添った電気屋。
「使い方がわからない」って言われれば、電話1本で行ってその日に直したり、使い方を説明する。
するとその顧客の満足度は上がっていくので、リピート率がすごく上がるんですよ。
うちは、そこで学んだことを企業さんに対してやっています。
企業さんは、細やかなサービスを欲しがっているんですよ。
ああ、なるほど。確かにそうかもしれません。
山﨑:
電話1本でトラブル相談。
「機械の不調です」となったら電話1本ですぐ来てくれて、直すかある程度のところまで形にする。
例えば機材の一部は使えるけど残りは使えないとなれば、代替案を提案する。
つまり相手の生産をどれだけ止めないで仕事を続けられるかをすぐに考える事ができる電気工事店になっていくのが、うちの姿ですね。
今のお話、レベルの違いはあれど実は一昔前には常識だったことではないでしょうか。
20年、30年前にはどの電気屋さんも頑張っていたことに聞こえます。
地元の企業さん同士で連携してお仕事を組むのが常識だった時代には、電気工事も現場でプロ目線でアドバイスをするというのは、一般的なサービスだったのでは。
山﨑:
ですね。それが今はだいぶ薄くなってきてるんです。
一般的には工事の規模が大きくなればなるほど、何かあった時の保証問題や労務問題が出てくるんですよね。
だからこその対面サービスですね。
山﨑:
例えば、大手自動車の技術研究所の仕事も入ってるんですけれども、そこの仕事も入札なんですよ。
最初に入札した企業が、そのままいい仕事してるかって言うと、そうじゃなかった。
というのは?
山﨑:
入札が終わった5年後に事故が発生した物件があったんです。
それは細い電線を使っていて燃えちゃったんですよ。
普通の公共入札の場合は電気の設計書があっての入札なんですけれども、そちらでは電気の設計書はなく、ただ金額だけの入札だった。
なるほど。
素人目には電線の太さなどわからないですものね。
それでプロから見たら不十分な仕事になってしまった、と。
山﨑:
はい。平気でそういうことをしてしまう会社もある。
他には、太陽光発電が一時期伸びた時にたくさんできた会社さんが、今けっこう潰れてるんですよ。
それで、太陽光パネルの保守をする人がいなくなっちゃったんです。
売電の一番美味しいところだけは皆取りに行ったけど、その後のケアをしてもらえていない。
それはよく聞きます。実はパネルを設置した方で困っていらっしゃる個人の方や企業さんがたくさんいると。
山﨑: そういうところに向けて自社が発信していければいいですね。
街の電気屋さんとしては王道と言えるお話ですよね。
山﨑:
そうでもないですよ。
街の電気屋さんはまずBtoBはあまりしないので。
細かいサービスで企業さんに入っていくのは難しいんです。
うちも、すごく小さな窓口でもいいから、少しずつ入らせていただいている形です。
う~ん、なるほど。
したたかに頑張ってらっしゃるっていうことなのですね。
一見需要が見えない、入り込む余地がなさそうなところにも入口を見つけて入っていってビジネスに繋げる姿勢ですね。改めて凄いと思いました。
山崎さんは商工会の青年部長も2年間務められて、私も青年部の担当事務局として大変お世話になっております。
益子町商工会青年部について、正直どう思いますか。
山﨑:
今一番辛いのが、入ってきても失敗できる場じゃなくなってる。
以前は部員がたくさんいたので、何かを失敗したらそれを補ってくれる先輩や仲間がいた。
今は支えて直してくれる仲間が減ってきてしまったんで。
リカバリーが効きづらいという事ですね。
山﨑:
はい。 だから失敗したら本当に失敗しっぱなしで、自分の自信がなくなって終わってしまう。
怒られたら怒られたで終わりで、次の成功を先輩が見せてあげられてない。
それが悩ましいですね。
そうすると挑戦ができなくなってしまうんで、それが悩みですかね。
なるほど。それはどうしたらよいのでしょうか。
単純に人が増えたら改善しますか。
山﨑:
いや、皆さん時間もない中で来てくださっているんです。そこの余裕がまず無い。
なので、もっとみんなの自社の利益が上がって、自分の給料が上がってったら、もうちょっと時間もできて、青年部にも目を向けられるんじゃないのかなと。
一社一社が良くなってからが青年部の出番という事ですね。
経営者らしいお答えですね。
山﨑:
青年部をやってて何か失敗したとして、「時間がない、仕事に戻らなきゃ」っていうんじゃ難しい。
上手な切り替えが必要なんです。
それがうまくできる人がどんどん少なくなってきている。
「青年部に出る時間があったら仕事してたい」となると、本当に社会貢献の意味が見いだせないですよね。
自分の会社がここの土地で仕事をさせてもらっている、商売をさせてもらっているっていうことの感謝を伝えることが、青年部での無報酬の事業な訳です。
ボランティア活動や 社会貢献活動をちゃんと胸に刻んでできるような状態でいるためには、まず自社が良くないとできないのかなと思います。
もうすぐ2年間の部長職を終えるタイミングですが、自分自身の活動を採点するとしたらどうですか?
山﨑:
うまくいったことは、自分の仕事に直結してしまうんですけれども、その補助金を学べたこと。
補助金ってどうやってできてるんだ?なんでこんなに申請しづらいんだ?っていうのは、初めて県庁に行った時に学びました。
道筋をちゃんと描いて作っていくと、その成果がちゃんと出るっていうところまでを、補助金を作っている担当の方から教えていただいたんですよ。
しっかりと言葉で構築して、成果を出すように描く必要がある。
だから、結果的には申請する人が誰でも簡単に申請できないし、わかりづらくなっている。成果も5年おきとか1年おきに出さなきゃいけない、見えるようにしなきゃいけないっていう、作る側の気持ちが初めて分かりました。
そうすると、そのあと立ち居振る舞いもわかってくる。
補助金を出す方の気持ちがわかるというのは、なかなか得難い体験かもしれませんね。
山﨑:
凄く良かった体験はそれです。
他については、もっとやってみたかったなって思うことは 特段なくて。
僕は今の部員全員の会社が、もっと成長すればそれでいいと思っています。
いや~、深く考えてるんですね~、部長!
山﨑: あははは!
次に続く青年部員の皆さんへの一言はありますか。
山﨑:
とにかく自社をより良くしてください。
そして、青年部に時間を使ってください。
青年部に時間を使ったらいいことありますか?
山﨑: ありますよ!また会社が成長します。
元気のいい青年部はみんな楽しそうですものね。会議の場所でも、イベントでも。
私も他の場所で元気のいい青年部を拝見してきて、とってもガッツと勢いを感じました
単純に声が大きいとか。
それは実は、自社が元気な人が多かったのかもしれません。
山﨑:
そうです。ちっちゃい企業だからこそ、青年部でも元気になるし、みんなも笑顔にしたい。自分が笑顔で居たいから。
シャンパンタワーの法則じゃないですけど、自分が満足してないと本当の笑顔なんて人にはあげられないですから。
山崎さんが個人でも会社としてでも、これからやりたいことはありますか。
山﨑:
やりたいことはいつもやってます!
「旅行に行きたい、どこか行きたい」と思えば、いろんなとこに行く仕事を取ってくればいい。
「新潟行きたい、長野行きたい」って思ったら、それに絡めた仕事を取ってきて、観光しながら仕事をしてくる。
「音楽が好きだ」って思ったら、それを仕事にしたいと思ったら、 それを探求していって自分の仕事と合致させられる点を探す。例えば小学校の放送設備を入れ替える音響の仕事とか。
自分の好きなことをどんどん仕事にするという事ですね。
山﨑:
もう、色々なことに欲が出てきて「もっと知りたい、もっと知りたい!」となってくる。
どんどん前のめりになれるっていうんですかね。
気になることを突き詰めて仕事と絡めていけば、やりたいことは自然とできているんです。
それに、やりたいことが増えていく。
やりたいことが増えていく、ですか。
なんだか楽しそうですね!
山﨑: はい。めちゃめちゃ楽しいですよ!
部長の元気の源を知ったような気がしました。
これからも益子町の駅前でずっと笑顔で頑張ってください。
応援しています!
山﨑: ずっと笑顔でがんばりますよ!ありがとうございます。